よりみち散歩。

日々の暮らしのなかで心に浮かぶよしなしごとを、こじんまりとつぶやいています。お役立ち情報はありません。

『あさきゆめみし』の幸せな女性

2013年09月05日 | 読書
図書館で、愛蔵版『あさきゆめみし』を発見し、
何故か最終巻から遡って再読してしまいました。



紫の上を失い悲嘆に暮れる源氏→女三宮を娶り、嘆き悲しむ紫の上→
風流貴公子ぶりに素直に嫉妬する紫の上

結末からの逆読みはほぼ初めてですが
「後悔するんだから、やめておけばいいのに」
と違う意味で源氏に苛立つやら、もの悲しくなるやら…
なかなか興深いものがありました。


さて、10年以上前に某サイトで「源氏物語で最も幸せな女性は?」
というお題を出されたことがあります。

「幸せ」の定義にまず頭を捻りました。

平安時代の常識で考えるか、
自分の憧憬に当てはめるか、
みな薄幸だから、敢て消去法ではかるか――。



私は「自分がもし『あさきゆめみし』の女人になるなら誰にする?」
と改題し、結果花散里を選びました。


決して美人でも目立つ女性でもないけど、人柄が優しく敵を作らない。
夫(源氏)との距離も、ほどほど。紫の上とも仲良し。
手先が器用で、趣味も悪くない。
育ての息子(夕霧)との母子関係も良好。

そして執着心が少なく、いつも微笑んでいる
これが重要です。

源氏にかかわる女性は、概ね憂き目に遭遇し、よく落涙していますが、
この花散里が涙を見せたのは(あさきにおいては)
源氏が須磨に流されたときだけ、だったと思います。


執着心と矜持の高さでは、六条御息所が筆頭にあがりますが、
読み返すと紫の上も伯仲ではないでしょうか。

源氏の愛が薄くなったとしても、彼は情をかけた女を見捨てることはない。
明石女御や秋好中宮、その他大勢に慕われ、また比類なき才能に恵まれながら、
「源氏の最愛の人」であることが、唯一の支えだったのが非常に残念で…。

他の女人たちがあっさり現世を捨てることができても、
彼女だけは出家を最後まで許されず、
何一つ、思うままにならずに身罷った紫の上。

不足なき容貌、性質、才能を天から受けた反面、
これほどの悲運もあるまい、という状況を己の心から作り出した女性ゆえ、
紫の上は大好きですが、ああいう生き方はしたくないなとも感じるのです。

…だいたい、源氏の最愛の人は「源氏本人」だと思いますし。
藤壺よりも、紫よりも、自分好き~!なオトコですよ、あれは。


そういう男であれば、花散里くらいの距離感が一番楽で、
疲れないだろう…としみじみ思いますね。



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