森ビルの関連シンクタンク、森記念財団・都市戦略研究所(所長・竹中平蔵慶応大教授)は「世界の都市総合力ランキング」の2013年版を発表した。
世界を代表する40都市を対象として、都市の力を表す主要な6つの分野(経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセス)で合計70指標を点数化して総合評価を下した。
総合ランキングにおけるトップ3は、1位ロンドン、2位ニューヨーク、3位パリで、08年の調査開始以降トップの座に君臨してきたニューヨークに代わり、昨年はロンドンが1位へ躍進したが、今年も引き続きロンドンが各分野で強みを発揮し、世界No.1の座を守った。東京は昨年と同じく、これらの都市に続く第4位だった。分野別でみると東京は経済と環境でトップ、研究・開発は2位。文化・交流が8位、「交通・アクセス」が10位と高いランクだが、「居住」は20位で平均的なレベルに留まっている。また国内の都市では、大阪が17位から23位に、福岡が33位から35位と共にランクを落としている。
ロンドンは居住分野でスコアを下げたものの、経済、研究・開発、環境分野でスコアを上げ、結果的にロンドンとニューヨークの総合スコアの差は広がった。また、パリと東京が大きくスコアを落として2位との差が広がり、4位東京と5位シンガポールとのスコア差は縮小した。
東京とパリとの関係だけで見ると、スコア差は昨年より縮小しており、東京での五輪開催決定を追い風に3位へのランクアップの可能性が出てきていると、同研究所は指摘している。
総合ランキング5位以下で見られた動向としては、6位ソウルが5位シンガポールとの差を大きく縮めたことや、フランクフルト、ウィーンの順位上昇が挙げられる。特にフランクフルトは環境分野と交通・アクセス分野が伸び、総合ランキングは12位から10位へ上がった。
また、中国の2都市については、いずれも経済分野での成長が顕著であり、特に北京は、経済分野において、順位は3位で変りはないが、同分野の1位、2位のスコアが大きく下がっている中、スコアを伸ばした。上海は経済分野では北京に劣るものの、文化・交流分野や交通・アクセ。ス分野でスコアを大きく伸ばし、総合ランキングでは14位北京を抜いて12位へ順位を上げている。なお、総合6位以下は、7位アムステルダム、8位ベルリン、9位ウィーン、そして10位は前述したフランクフルトとなっている。
不動産投資市場の世界ナンバー1はニューヨーク 東京は4位
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(米国・ニューヨーク)は世界の都市別不動産投資に関する年次レポートWinning in Growth Citiesを公表した。このレポートは2013年6月末までの1年間についてのもの。
総合1位はニューヨークで、3年連続で世界最大の不動産投資市場の座を維持した。年間投資額は前年同期比39%増の492億米ドル(約4兆9200億円)。2位はロンドンは6%増の323億米ドル(約3兆2300億円)。ロサンゼルスが躍進し3位。東京は昨年の3位から4位に下がった。香港はリテール、ロンドンはオフィス、ロサンゼルスは物流セクターでそれぞれ首位だった。
国際不動産投資市場は前年同期比16.7%増加し6,490億米ドル(64兆9000億円)となった。上位25都市(トップ25)への投資は20.7%増加する一方、その他の都市への投資は12.1%増にとどまった結果、トップ25のシェアは53%から55%に上昇している。
トップ25は、コアグローバルシティとしての投資リスクの低さゆえに投資家に選好されてきている。しかしトップ25のシェアは2013年第1四半期の 58%から第2四半期には50%にダウンしている。これは、投資家が新たな収益機会を求めて、これらコアグローバルシティへの重点投資戦略を見直しはじめた兆候かもしれないとしている。
クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)会長のカルロ・サンタルバーノは次のように述べている。「不動産需要は増加・拡大する。そして投資家はリスク許容度を高め、新たな市場を求めてより多くの投資が国境を越えることを多くの指標が示している。米国の景気回復が引き続きすべての経済圏の信頼と成長を牽引する支えとなるなら、次年度は景気刺激策や景気回復がテナント需要を伴って良質な空間の資本価値を上昇させるだろう。ほとんどの市場にとって好ましい結果になると予想される。」
トップ25の顔ぶれは昨年度からわずかに変化した。北京(中国)とストックホルム(スウェーデン)が圏外に去り、デンバー(米国)とフランクフルト(ドイツ)がランクインした。投資の増加率が大きかったのは、オースティン(米国テキサス州)、ミラノ、ラスベガス、モントリオールとタンパ(米国フロリダ州)で、増加率が大きかった上位25都市のうち15都市を北米が占めた。
これは、主に北米の景気回復の前兆と国内資本の大きさに起因している。残る10都市のうちアジア太平洋勢は、ソウル、パース(豪)、ブリスベン(豪)、シドニー、名古屋、大阪の6都市だった。
トップ10のうち大きく順位を下げたのはパリで昨年度の4位から8位に後退した。順位を下げた他の主要都市としてトロントとシカゴが挙げられるが、より顕著なのは中国の上海、北京、広州、成都、天津で、開発用地の販売を除きいずれも40%以上の投資減少となった。これはクロスボーダー投資よりも主に国内支出の削減によるものだ。
日本の貿易構造変わる 中国輸出後退で
世界の工場と言われている中国に部品などを輸出し、外貨を稼ぐ日本の貿易構造が、変わってきた。2013年上期の日本の対中輸出は、減少、通年でこれまで首位を保ってきたが、3位に後退する可能性が高まってきた。
この背景として、日本の製造業が、アジア全体で、サプライチェーン(供給網)を築き、現地や日本からの部品調達に切り替えていることがあげられよう。
中国国家統計局によると、日本の中国向け輸出(ドルベース)は、上期761億㌦と前年同期比で13.8%減少した。一方韓国は、11.6%増、台湾は、36%増といずれも大幅な伸びを見せているのが目立つ。日本の不振が際立っているのは、現在の日中韓の冷え込みの影響が多少ともあると見る向きは多い。
こうした日本の輸出が前年同期比でマイナスに転じたのは、2012年1~3月。品目別の影響度を見ると対中輸出の主力商品である建設機械など、一般機械の不振が響いているのが際立っている。日本建設機械工業会によると、5月は前年同期比71.8%、減と激減している。中国政府の不動産投資抑制策で、建設機械の需要も急減しているのが要因となっている。
そしてもう一つの要因として見られるのが、円安・ドル高であろう。一部の円建て取引の輸出率がドル換算で、目減りしたためと見られている。中長期的には、日本企業が生産拠点を現地化したり、グローバルな部品供給を整えたりしている影響が大きいとみられる。2012年度の日本の輸出全体に占める、中国向けのシェアは、前年度比1.4%減の17.7%で、4年ぶりに米国に抜かれて、2位となった。
一方輸入においては、順調に増えたものの、日本の対中赤字は、約4兆円に膨らんだ。