インフルエンザのワクチンには、「感染」を抑える働きはありません。感染とは、ウイルスが口や鼻から体内に入り、体の中で細胞に侵入して増殖することをいいます。
体内でウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛みといったインフルエンザの症状が現れます。この状態を「発症」または「発病」といいます。ワクチンには、この「発症」を抑える効果があるといわれています。
もう一つのワクチンの効果は、インフルエンザの「重症化」を防ぐことです。
インフルエンザが発症しても、多くの人は1週間程度で回復します。しかし中には肺炎やインフルエンザ脳症などの重い合併症が現れ、入院を必要としたり、死亡したりするケースもあります。これをインフルエンザの「重症化」といいます。とくに幼児はインフルエンザ脳症にかかる危険性が高く、また基礎疾患のある人や高齢者は重症化する可能性が高いと考えられています。
厚生労働省のホームページには、同省の厚生科学研究班による「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」の報告が掲載されています。その内容は、65歳以上の健常な高齢者については約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったというものでした。
このように、インフルエンザワクチンは、接種すればある程度の発病を阻止する効果があり、またたとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。ただし、この効果も100%ではないことに注意が必要です。
季節性インフルエンザワクチンは、ワクチンの予防効果が期待できるのは接種したとき(13歳未満の場合は2回接種したとき)の2週後から5カ月程度までと考えられています。そのため、流行前にワクチン接種を終えておかないと、予防効果が期待できないこともあります。
またインフルエンザワクチンの接種では、SARS(重症急性呼吸器症候群)や、ヒトに感染例が認められている鳥インフルエンザ(A/H5N1亜型)、他のウイルスによる風邪(かぜ症候群)にも効果はありません。
一方でよく心配されるのは、ワクチンを接種することによる「副反応」です。副反応とは、ワクチンを接種したとき、「免疫がつく」というワクチンの目的以外の反応がみられることで、一般的にいわれる「副作用」とは区別されています。
季節性インフルエンザで比較的多くみられる副反応として、接種を受けた人の10~20%に、接種した場所の赤み、はれ、痛みなどが、5~10%の人に発熱、頭痛、寒気、だるさなどが見られます。しかしどちらも通常は2~3日で症状がなくなります。このほか、まれにワクチンに対するアレルギー反応も見られています。
そのほか、まれに重い副反応や、数件の死亡例もありますが、厚生労働省によれば、重症例や死亡例とワクチン接種の直接の明確な因果関係がある症例は認められず、また、死亡例については、ほとんどが重い持病をもつ高齢者だったとのことです。
参考資料:厚生労働省「インフルエンザQ&A(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)
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