東京電力福島第1原発事故に伴う除染が続く福島県ではこれまで、中間貯蔵施設の見通しが立たないため除染の遅れを招いてきた。今回の政府の建設要請には、手詰まりを打開し除染を一気に前進させることで復興を加速する狙いがある。一方で、地元では「施設が最終処分場になる」との懸念が根強い。政府は「30年以内の県外処分」の法制化を約束することで懸念を払拭したい考えだが、仮に法制化できても「最終地」の選定など高いハードルが残る。
これまで政府は中間貯蔵施設について、「最長30年間保管し、福島県外で最終処分する」と約束してきたが、県や地元自治体はあくまで法律で明文化するよう求めてきた。だが、現実的には県外の自治体が受け入れる見通しは容易に立たないため、政府は平成24年7月に同様の内容を閣議決定していることなどを理由に法制化を先送りしてきた。
地元では「なし崩しに最終処分地になる」との懸念が強い。14日の要請後の記者会見でも、楢葉町の松本幸英町長が「法制化についてこれまで明確な話はなかったので、一定の評価をしている」と話す一方、双葉町の伊沢史朗町長は「責任を持って対応してほしい」と話すなど、慎重姿勢を崩さなかった。
最終処分場は「全くの白紙」(環境省)の状況だ。環境省の担当者が「放射線量が極めて高い使用済み核燃料などを保管する貯蔵施設とは全く別物」と強調するように、同列では論じることはできないが、原発の使用済み核燃料などの中間貯蔵施設を受け入れてきた青森県の場合、「核のごみの最終処分地にはならない」と国や電力業界と約束。国は県に対し、最終処分地にしないことを「確約する」と文書で繰り返し回答してきた。
福島の場合、大半の廃棄物の放射線量は1キロ当たり数万ベクレル程度とされる。政府関係者は「30年後には大半が一般ごみと同じレベルまで線量が下がる。建築資材としてリサイクルもできる。県外搬出は可能だ」と説明する。
だが、原発事故をきっかけに、国民の放射性物質への不安は強い。福島県以外の自治体では、線量が比較的低く各県ごとに処分することになっている「指定廃棄物」でさえ、「福島県内で処分すべきだ」との意見が根強い。
14日の要請で、政府は具体的な最終処分の方法として、「放射性物質の物理的な減衰や、今後の技術開発の動向などを踏まえつつ、幅広く情報収集を進めていく」としただけだった。
最終処分をめぐる県外の受け入れ先探しは難航が必至で、今回要請された中間貯蔵施設の建設さえも、なお曲折が予想される。
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