サンパウロ新聞 6月22日(土)0時46分配信
上院議会で10年間議論されてきた医療行為法案が18日に可決され、ジルマ大統領の承認待ちとなっている。19日付の地元紙が報じた。
医師の職域を規制するこの法案が可決されることで日常業務が制限されることを危惧していた医師以外の医療従事者を擁する各審議会が、同法案を支持する連邦医師審議会(CFM)に対立する形となった。
この法案では病気の診断、治療方針の決定、手術や侵襲的な治療の指示と施行などを、医師だけが行うことのできる医療行為だと定義している。侵襲的な措置には、皮下注射、穿刺(せんし)、点滴で表皮よりも深部に達する治療や、内臓に働きかける目的で鼻腔や耳腔に行う鍼灸(しんきゅう)、痰(たん)や脂肪の吸引などが含まれている。
医師以外の医療従事者らは、鍼灸や自然分娩の介助、また日常的な病気の判断といった医療行為が今後は医師に限定されることに対して危機感を抱いている。
一方この法案では、体の機能性、心理的な状態、栄養状態に関する診断、患者の言動の評価などについては、医師のみに限定しないよう定められている。
また、細胞病理検査の実施と診断書の発行を医師に限定するかどうかという点については、法案の中で明確に規定されていない。細胞病理学検査には子宮頸がんの検査として知られるパップテスト(パパニコロー検査)など定期的に行われるものがあり、今後の論点となるとみられる。
ルシア・バニア上院議員(社会民主党=PSDB)は「この法案は医師以外のすべての医療従事者を医師に従属させるためのものではない」と説明している。さらにCFMも、医療従事者に制限を与えることを目的としているわけではないと強調した上で、あらゆる医療現場における医師の参加を保証することが主な目的だと語った。
この法案は、施行60日後から有効となる。
サンパウロ新聞
ブラジルデモ100万人 衝突激化 大統領が訪日延期
産経新聞 6月22日(土)7時55分配信
【ニューヨーク=黒沢潤】来年6月のサッカー・ワールドカップ(W杯)に多額の公金が投入されることなどに反発したブラジルの反政府デモは20日、首都ブラジリアなど少なくとも100都市で行われ、AP通信によれば参加者は計100万人を超え、過去20年で最大規模となった。
ブラジリアでは20日、デモ隊が国会議事堂を取り囲み、治安部隊とにらみ合いを続けた。一部都市ではデモ隊が車両に放火したり、治安部隊がデモ隊に向けて催涙弾を発射したりするなど、激しく衝突した。
ブラジルでは、日本代表も出場するコンフェデレーションズカップが開催中。大統領府は同日、デモ対策を優先させるため、ルセフ大統領の日本訪問(26~28日)の延期を発表した。大統領は訪日で、日本からの原発輸出や資源・食糧の安全保障について安倍晋三首相と会談し、天皇陛下とも会見する予定だった。
ブラジルは労働党政権下のこの10年間で、国民の約2割が貧困層から中間層になった。新興5カ国(BRICS)の一角として国力を増しW杯招致にも成功し、現在、スタジアム関連施設に約150億ドル(約1兆4500億円)を投じて工事を急いでいる。
しかし、国家の威信をかけて関連施設の建設を進める一方、社会基盤の整備がおろそかになった。デモは今月2日、サンパウロで公共交通機関の運賃が引き上げられたことを機にブラジル全土で起きた。デモ隊はスタジアム建設の巨額資金は「税金の無駄遣いだ」と反発し、W杯よりも、教育や医療などの福祉充実を優先すべきだと訴えている。
しかし、公共交通機関の運賃値上げ撤回が表明されても、逆にデモは拡大した。デモには貧困とは無縁の裕福な家庭の大学生も目立つ。交流サイト、フェイスブックを通じ人々はデモに続々と参加、公共施設や銀行のATM(現金自動預払機)の破壊、商店からの略奪も起きている。
7月にはローマ法王のブラジル訪問が控える。W杯1年前の大混乱にルセフ大統領は危機感を抱いており、訪日中止など、国内対策を最優先せざるを得ない状況に追い込まれている。ルセフ大統領はデモ参加者をなだめる一方、21日に緊急閣僚会議を開き対策を協議する。しかし、デモが収束に向かう気配はなく、政権には打つ手がない。
史上最多となる5度のW杯制覇の実績を誇るブラジル。経済成長で豊かになり、W杯に続き2016年の五輪招致にも成功したが、世界が注目する1年後の“国技の祭典”の開催には、暗雲がたれこめている。
ブラジルデモ サッカー王国、なぜW杯に反発
2013/06/21 23:04
ブラジルで過熱するデモが示すのは、国の経済成長に伴い、国民が夢を託すスポーツではなくなってきているという現実だ。
同国サッカー連盟会長のホセ・マリア・マリン氏(81)は「ブラジル人は生まれたときから、サッカーとともに生きている。医者や弁護士などのキャリアというが、ブラジルではサッカーを練習することがキャリアだ」という。
ブラジル代表チームではかつてロナウドやアドリアーノら、ファベーラと呼ばれるスラム街出身の選手の活躍が目立った。ボールすら満足に手に入らない貧困から抜け出そうともがく子供たちにとり、世界を股にかけて活躍するスター選手は希望の象徴でもあった。
だが、中国やロシアなどとともに新興5カ国(BRICS)の一角として経済発展を果たし、中産階級が増えた今は違う。用具は簡単に手に入り、才能を見いだされれば、母国の代表で活躍する前でも国内外のプロクラブの下部組織でエリート教育を受けられる。
南米最大規模のファベーラであるリオデジャネイロのロシーニャ地区にさえ、芝生のグラウンドがつくられ、子供たちがまっさらなユニホームとスパイクを身につけて、ボールを追いかける姿が見られる。
来年のW杯のプレ大会であるコンフェデ杯開催中に勢いを増す反政府デモ。沈静化にてこずるようなら、ブラジル人がサッカーにかける思いの変化を世界に知らしめる結果となりそうだ。(藤原翔)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます