もう30年以上も前だろうか。あるファミリーレストランの企画をしていたおり、たまたま「サンクスギビング」デーをイベントと企画のキーワードとしようと思い付いた。それからサンクスギビングデーについて書籍を買って調べ(現在のようにインターネットで簡単に調べられなかった)、私はある大きな感動とともに、アメリカに対して深い失意を抱いた。
メイフラワー号は1620年11月半ばにプリマスに上陸した。彼等はピルグリム・ファーザーと呼ばれる。辺りの樹を伐りだし、丸太のコモンハウス(集会所)を建てた。その冬は寒さが厳しく、病死、餓死者が続出して移住者の数は半分に減った。このままでは全員が飢え死にしてしまう。
そんなとき、彼等は二人連れのインディアンの男に出会い、食糧をわけてもらった。彼等インディアンは酋長を伴い再び彼等の元にやって来た。彼等はインディアンから、その土地に適した新大陸のカボチャやトウモロコシなどの種をわけてもらい、その栽培法も教えてもらった。彼等はまた野生の七面鳥の捕らえ方や鹿を獲る仕掛けなども教わったのである。
1621年の秋、収穫を迎えた。彼等は恵みをお与えくださった神に感謝し、またインディアンの友を得たことも神に感謝した。彼等は神に感謝するささやかな食事会を開き、インディアンたちも招いて感謝の気持ちを伝えた。
やがてアメリカは何度か国が分裂する危機を迎えたが、時の大統領はそのたびに、ピルグリム・ファーザーたちの艱難辛苦を想い、また神に恵みを感謝する日をサンクスギビングデーとして制定したり、また改めてナショナル・ホリデーとして制定したり、その日を11月第4木曜日に制定するなどして、その国家的分裂の危機に際し、国民の心を一つにすることに成功した。
アメリカに対する失意とは、ビルグリム・ファーザーたちはインディアンに助けてもらい、彼等と何の隔たりも持たずに交流してきたにもかかわらず、やがてアメリカ人たちは、インディアンたちを騙し、その土地を奪い、彼等を追い出し、殺戮していったのである。そしてついにインディアン達を限られた土地に閉じ込めてしまった。いまでもアメリカには根強い人種差別が残っている。
いま感謝祭・サンクスギビングデーは単なるナショナルホリデーとして、七面鳥料理やパンプキン料理を食べて楽しむだけだが、もう一度ピルグリム・ファーザーたちの苦労を偲び、彼等を救ってくれたインディアンの友人達のことも想い、神に感謝すべきであろう。