馬好きの私は、スタインベックの「赤い子馬」という短編小説に胸が一杯になる。鼻の奥がツンとする。しかし、あまり好きになれない。
スタインベックの短編小説はなかなか良い。おそらくスティーヴン・キングの「グリーンマイル」の死刑囚は、「二十日鼠と人間」の殺人犯を下敷きにしたものであろう。
巨大な体躯で、強い膂力を持ち、白痴である。優しい心の持ち主で、小さな命を愛おしみ、その大きな掌に包むように抱きしめるとその命は潰れてしまう。可愛い少女を愛おしむように抱きしめると彼女の背骨はへし折れてしまう。あるいは騒がれて口を塞ぐとその細い首がへし折れてしまう。そうして殺人犯となってしまった彼を憐れむ男がいて、その世話をしながら町から町へと長い逃亡を続けるのだ。
…またこういう凸凹コンビのさすらいの物語は、アメリカの小説や映画に度々描かれる。ジーン・ハックマンとアル・パチーノの「スケアクロウ」もそういった作品だった。
これらの映像には、決まって風に丸められた枯れ草が、その風にコロコロと転がっていくシーンが登場する。タンブル・ウィードである。もちろん、「怒りの葡萄」にも登場する。
スタインベックの「赤い子馬」は、少年が美しい栗毛の子馬を愛おしむ物語だが、その結末は悲劇的で、残酷である。その残酷さゆえ、私はあまり好きになれない。しかし、良い作品である。ご興味があればぜひお読みいただきたい。しかし残酷な結末なのである。
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