前回に引き続き、アップルストアのキッズワークショップの話。で、ヒビキはどうしていたのか、というのが今回の話である。
実はヒビキはMacのガレージバンドでは、「ただひとつの」曲しか作らない。いったいどうなっていてどういうことなのか、未だ親たちには不明なのであるが、内蔵音源にあるララドレミ、ララドレ、というひとつのフレーズを使って、曲を作るのである。曲を作るといっても、サンプル音源を使って作る場合、オリジナルなメロディはないわけであるから、どうしてもサウンドスケッチのような雰囲気になる。
だがヒビキがやろうとしているのはそういうある意味「オシャレ」なこととも違って、やはり1曲作るという感覚なんだと思う。自分でも時々歌を作るが、ただいつでも、それらはとても短いのである。たとえば紅白にも出場したポリリズムなんかはとても短いですよね。短いフレーズを繰り返して全体として1曲になっている。ただポリリズムは2つのメロディがあるけれども、あれがさらに1つしかないという感じ。
で、そのようにメロディっぽいサンプル音源を使うと、ふつうはコドモには手に負えないのだろうが、ヒビキはもともと曲だと思っているから、同じメロディでも一つは次へ続く、もうひとつはフィルへ向かうリズムセクションの音源を選んで、何小節か分を作ってしまい、あとはループをかけるのだ。
というのが、どうもヒビキが音楽制作でやっていることなのである。
ここまで書いてきてようやく思い出したが、以前のワークショップの時は、リズムにどういう音を入れるか、どれだけ重ねられるかというのを試していた。今回は左右の音の振り分け、パートごとの強弱を入念にやっていたなあ。もしかしてキミ、スタジオ好き? という感じの、クラシックイタチの世代では高校2、3年生時代に若干そういうマニアがいたかもという嗜好性である。
それからどうしてそういうアイデアが思いつくのかわからないが──考えてみると、もしかしたらメロディの音源の音色が思い出させたのかもしれない……──グロッケンのパートなんかも試していた。つまり、ある程度作ったところで、グロッケンが違うメロディを弾くのを足してみたらどうだろうというわけである。(よくないと思ったらしく、何度か聴いてから却下)それからブタの鳴き声みたいのを録音して「ゴスペル」の音色にしたやつを面白がっていたが、結局は使わなかった。常人には思いつかないようないろんなジャンルの音色を試してみること、よくなければ使わないこと──とくれば、パーカッショニスト仙波師匠の教えに通ずるのである。
ところでレクチャーのスタッフの方が外部のMIDIキーボードでドラムのパートを録音していたのだが、不思議そうに見ていたヒビキ、帰り際になって、
「あれさ、スタジオで(ドラムセットを)叩いたやつをこれ(Mac)で録音すればいいよねえ?」
と、それまできっと「?」になっていたことがようやく質問のていを成したよう。
「フィルを録音するときは、最後のシンバルは(次の小節の1拍目になるので)叩かないでおけばいいんだよね?」
と、サンプル音源のロジックで考えているようだ。うーん、ヒビキくん、それだとあべこべなのでは? と古い私は思わぬでもないが。だがその前にだ、そもそも、ドラムから発想してメロディがある曲になるんだろうか? それともなんらかのメロディありきでの音楽制作というイメージなんだろうか? またまたコドモ的音楽宇宙の謎の深まる、音楽制作体験なのでありました。
[Apple Store 新春キッズワークショップで音楽制作を体験 2009]
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