スパムって読むものなのか!?
とつっこまれそうだが、日本語だと一瞬でスパムと判別できるのに、英語だとにわかには判別できない。そこで、スパムだとは思うけれども、いちおう少し読んでみる(笑)。
スパムが来るかどうかは、ほとんどフィルターの性能に左右されるといってたぶんよいと思いますが、フィルターの更新頻度がいまいち遅かったり、あるいはスパムが網の目をかいくぐったりして、やっぱりスパムは来る。今日も来る。明日も来るだろう。
だけどさほど大量に来るわけではない、という状況になってやっと、どれどれどんなスパムが生き残ったのかな、という興味も湧くというものだ。
で、最近、日本語のスパムと英語のスパムはぜんぜん違う。
日本語のスパムはほとんどオレオレ詐欺(もうそう呼ばないらしいですが)に似ている。英語のスパムは、むしろSNS的な環境に近い、と言えるかもしれない。
日本語のスパムは「マスコミ」型で、誰にでもある欲求、典型的なのが儲け話と風俗といった内容を総当たり的に配信している感じがする。英語のスパムは「ビッグデータ」型で、つまり私個人をかなり絞り込んで、マーケティングされたメールが送られてくる。
英語のスパムにももちろんバイアグラやロシアの美女を紹介しますといったものが残存しているが、以前に比べるとずっと減っている。ビッグデータというのはこの場合、私のアクティビティである商品の購入履歴であるとか、何かへの登録とか、閲覧などの記録を解析しているだろうということだ。これらを取得していなければ、こういう絞り込んだスパムは打てないだろうと当然に考えられるわけである。
簡単に言えば、商売しようという相手は、私が「これこれに興味を持っているな」ということを察知している。この観点でいうと、日本語ではgoogle関連のサービスにいくつか、私の嗜好性を知っていると思われるものがある。特にAdSenseでナゾなのがあって「ピアノが弾けるようになりますよ」という宣伝をせっせとやるのだが……私はピアノを弾きますので、いま別に今急にレッスンが必要じゃないのですよ。だけれども、私とピアノというところは結びついていると評価でき、しかしながら一向に効果のない宣伝をし続けている。(上達するよと何度も言われるうちにその気になる、というジャンルでもないし。)もうひとつは、youtubeに出る広告ですね。以前はダイエット食品猛攻撃で、最近はヘアカラーの一点張り。これはアマゾンの履歴を盗られているかなあと感じます。
ところで、今書いたような私にはこういうスパムが来ますという話をすると、すなわち、私はウェブでいつもこういうコトしてます、と告白とほとんど同じ、ということに、もうみなさんお気づきですね。そう考えると、私に来る日本語のスパムの性能が悪いのは、もしかしたら私が日本語で行うウェブ上のアクティビティが少なく、やや情報不足なのかもしれない。購入履歴そのものは言語は関係ないかもしれないので、SNSへの投稿が少ないか、機械に理解できないのかも(笑)。
一方、英語のスパムというのは、これはもう狙い打ったように、最近多いのが「あなたはwritingに興味がありますね」というものだ。これはピアノと似たようなもので、さほどあるニーズではないし、スパムもかなり長文だったりする。同様に少し前まで多かったのが「日本で、managementのとてもいいpostがあるから紹介したい」というもの。managementのポストが総当たり的メールで送られてくるのはへんだという点では相当間が抜けているし、だからこそそんなわけがないだろう、という「読み」もコミなのかなんだか知らないが、でもまあ、最近は減ってきている。
私がwritingに興味があるってことを、いかに機械が知るのか? もちろん思い当たるところは重々あるのだが、今私が面白いと思っているのは、それがとてもSNS的だということだ。私たちは──たとえば中学〜大学生の頃──自分はこういうことに興味があるんだということを、一生懸命「表示」していたように思う。映画が好きなら映画に友達を誘ったり、本を貸したり、いかにもそれとわかるスポーツを暗示する服を着こなしたり……。そういった努力がいま、もしかしたらあまり機能しなくて、要するに「個性」というものが発揮しにくいとしたら、そういう「あなた」を商業的なしくみが拾い上げて、「あなたはこういう人でしょう」と「話しにきてくれる」。スパムは、そのような(友達にさえ近いような)環境の一部を構成しつつあるのではないか。
SNSにおいてみんながリアクションしてくれるように、機械がリアクションしてくれる。だけどおまえは機械だから、人がわざわざ機械にレスポンスしなくてもいい。これがスパムだから読まないが、SNSに投稿されてきたら、そうでもないかもしれない。実際SNSにはプロモーション投稿的なものが存在するが、このような広告ももしかしたらもっとヒト"然"とした、広告らしからぬもののほうが効くのかも知れぬ。