少し遡るが、話を二十代の頃に戻そう。
母としては、私に幸せな結婚をしてもらいたかったんだと思う。
せっせと私の着物を次から次と作っては嬉しそうにしていた。
お見合いもさせられた。
私はお見合いというものが好きになれなかった。まるで品定めをされるように思えたから。
20代の頃は高学歴の方からの話が結構来たが、30代になるとこうも違うのかと思う程、相手方の経歴にかなりの差があった。
それでも趣味が合いそうだなぁという方が一人いて、絵や芸術が好きで美術館に行くことにした。美術館は小高い所にあって、行くまでが大変、そして絵画を観るから歩いて回るのが大変、最後にお茶をしたがその時には私は疲れ切って言葉を発することが出来なかった。
何らかの病気があるということを伝えようと思っても会話にはならなかった。その後彼からの返事は無いままで終わった。
私は結婚しても、何時も疲れている状態を説明するのは不可能だし、結局分かってもらえずに自分が苦しんで離婚する羽目になることが分かっていた。だから、結婚しないのは正しい判断だと思った。
父母にはお母さんたちを見ていても幸せそうじゃないから…と言い訳をした。
私はこれまで結婚しなかったことで後悔したことはないし、これでよかったのだと思っている。