白萩のしだる流れに桔梗花
元興寺残るは一堂秋の花
有馬温泉・奈良俳句写真紀行も今回で終了です。
元興寺は本で名前は知っていたのですが、訪れたのは今回が初めてです。世界文化遺産「古都奈良の文化財」8資産群の一つで、奈良時代には近隣の東大寺、興福寺と並ぶ大寺院で、その境内の広さは、現在「ならまち」と呼ばれる界隈の大半を含む広大なものだったそうです。しかしながら中世以降次第に衰退し、今は、狭い境内に国宝極楽堂(極楽坊本堂)と国宝禅室が残っています。
狭い境内にお堂が一つだけぽつねんと佇んでいるのを見まして、有名な平家物語の冒頭が浮かびました:
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏ひとへに風の前の塵におなじ。」
仏教の寺院も例外ではないのかなと思いつつも、境内が閑散としている所為か、何故か、さっぱりした、清々しい感じもし、心が軽やかにもなりました。
お庭も簡素なものでしたが、白い萩がしだれ生い茂っているところに私の好きな桔梗が静かに佇んでいました。今の元興寺に相応しい清楚な感じです。
蘇我馬子が建立したといわれる日本最古の寺院、飛鳥寺(法興寺)がその前身で、平城遷都にともなって新築移転されて元興寺になったとのことです。
元興寺を後にして東京には京都経由で帰りました。京都駅の伊勢丹にあります葵茶屋で昼兼夕食を食べましたが、料理もさることながら、インテリア、とりわけ、五重塔と大文字焼きのお山が描かれている丸窓の影絵にはしびれてしまいました。さすが京都、と感心しました。