ITF埼玉ワイルドカード大会1の初日、残念ながら初戦で敗退してしまったHるみとRょうたは、お昼すぎには本日の予定は終了してしまいました。その後、私も彼らも他の選手の試合を見たりしていたのですが、まだ全試合が終了する少し前にHるみがバッグをかついでこちらへ歩いて来るのが見えました。どうやら早々に帰る出で立ちです。
ITFに出場の経験の少ない彼らは、この後、空きコートができるとみんな練習を始めることを知りません。
↓それとは対照的に、マンガを読んだり、ゲームしながら練習コートを待つ優勝候補の強豪たち!
急いでHるみを呼び止めて、「転んでもただでは起きない」の精神でうまい子たちにかたっぱしから声かけて練習してもらうべきじゃないか?とお話したのでした。そして、もう一人のRょうたにも帰る前にその話をしておこうと探すも、見つかりません。もしやもう帰った??と思い、携帯を見ると「お先に帰りますー」のメールが数分前に入っていました。急いで電話するともう車に乗っていて、高速に乗る直前でした。ひととおり説明し、もう少し早くお話すればよかったと謝り、お母さんと相談して行動は自分で決めていいよとお話すると、しばらくすると会場にもどってきました。
Hるみはインドとバーレーンで、Rょうたはバーレーンで、ダブルスパートナー探しを経験していますが、なにぶんシャイな日本人のこと、自分よりはるかにうまい選手たちになかなか声はかけられない状況は予想できました。
そこで、関東全国常連の女の子2人(NっちゃんとMさの)に声をかけたところ、こころよく練習相手をひきうけてくれました。一番最初に空いた練習コートで3時から3時半を予約して練習開始。3時半になっても次の選手たち(このコートの次の時間を予約して紙にサインした選手)が現れないので、そのまましばらく練習していました。3時40分ころに一人の女の子がもう時間がないからと抜けて、RょうたとNっちゃんのふたりでポイント、Hるみはベンチで座っていました。
…すると…
むこうから全国トップ常連で、優勝候補のふたり、KきとTかしが歩いてきました。(マンガ、ゲームモード終了、練習準備中)聞くと4時から練習コートのサインをしてあるそうです。そして、私が「うちにへたくそだけど2人男子選手がいるんだけど、少し練習してくれない?」と言ってみたところ、なんと笑顔でOKしてくれました。なんて優しい子たち!
「4時から一番むこうのコートにいますので、来てください」の言葉を残し、2人は去っていきました。
ふたりにとってはものすごいチャンスがめぐってきました!!とてもラッキーなことです。
でも、私がするのはここまで。あとは自分たちの勇気が必要です。勇気のテストみたいなものですね。
数分後、一番奥のコートを遠目に見ると、ふたり(KきとTかし)がコートに入って行き、前の選手が終わるのを待っています。そこで、ベンチに座っているHるみに、(RょうたはまだNっちゃんと試合してましたので)今すぐ走って一番奥のコートへ行って練習に入れてもらうようにと私は言いました。
それはなぜかと言うと、一番奥のコートでふたりがもしラリーを始めると、あとから来るHるみなりRょうたなりが加わりにくい…最初に2対1のラリーでHるみが2側に入れば、その後Rょうたが来た時入りやすい…ととっさにひらめいたからです。
Hるみはラケット持って走っていきました。4時少し前にRょうたとNっちゃんの試合練習が終わったので、Rょうたに、すぐ一番奥のコートへ走って行くように言いました。そして最後にひとこと「お前とHるみが打ち合ったら意味ないんだからね!」と付け加えました。
そして、私は歩いて奥のコートの方へ移動。
…すると…
KうきとTかしがふたりでミニラリーを始め、HるみとRょうたはコートの横でもじもじしています。数分その状態が続き、しかたないので、HるみRょうたで打ち合いを始めました。その後、両組ともベースラインラリーに移行。このままのペアで最後まで練習が終わるか?(つまり勇気を出して、交代して下さいと言えずに)と思って見ていると…
知り合いの女子選手が来て少ししゃべっていて、数秒後に顔を上げると…なんとびっくり
いつのまにか、ペアが変わってKきとRょうた、TかしとHるみが打っています。
KきTかしが、気をつかって声をかけてくれたのか、と思っていたら、あとから聞いたら、Rょうたが自分から勇気を振り絞って
「ペア交代してもらえますか?」とか弱い声で言ったそうです。
よくやりました!!!すばらしい!!!!!
Rょうたお母さんにはご褒美として、今夜の晩ご飯
ステーキにしといて下さいと言っておきました。
テニス選手には時に、自分の上達のためにはもじもじなんかしていてはいけない場面が巡ってきます。自分の上達を取るか、恥ずかしいことをしたくないという気持ちを優先させるか…もちろん、その後強くなる選手の取るべき行動はいつも同じです。
結局、高速近くから戻って来た事よりも、とても大きなラッキーをものにしたふたりでした。
おつりが来るほどです。
この事件の最中、大阪市長杯スーパージュニアの時に起こった「びびりモード事件」を思い出しました。
つづく。