今は熱中症の予備知識があるから運動中の水分補給は欠かせないものと理解しているが、
かつて運動中の水飲みはご法度だった。
特に課外クラブは『耐えてがんばれ!!』という精神論で乗り切った。
高校時代は剣道部だった。
夏場に防具をつけていると熱が発散されず、バラバタと部員が倒れた
そんな部員たちを、先輩は『練習が終わったら、テッカンビールをたらふく飲ませてやる」と励ました。
どんなにうまい飲み物なんだろう、高校生がビールを飲んで大丈夫なんだろうか…などと想像を膨らませているうち、
何とか倒れずに練習をこなした。
テッカンビールとは何のことはない、鉄管から出る水道水のことだった。
だが、練習後はこれがやたらと美味い。飲むだけでなく頭からかぶると、全身に湯気が立った。
耐えに耐えたことのご褒美にふさわしい至福の甘水だ。
当然のごとく、上級生になると、テッカンビールの言葉で下級部員を励ました。
それも、岩国市の水道水の元々の美味しさがあればこその話だろう。
市販のミネラルウオーターの中には、はるばる海外から高額の輸送コストを掛けて持ち込まれるものもあるが、
考えてみればばかばかしい。
市民が蛇口をひねると、おいしくて安全な水がほとばしり出る、その幸せをまず知っておこう。