最近のみなさんは、今日みたいに暑くてじとじとする日は、朝起きたらシャワー、お出かけから帰ったらシャワー、大汗かいたらシャワーというところでしょうか?・・・
私は、どんなに汗をかく一日であっても、夜に一回だけ風呂に入ります。(シャワーですが)・・・一日一回だけ・・・(え~不衛生!)・・・かもしれませんが・・・
と言うのも、元々家風呂がなく、毎日銭湯へ通っていたから、何回も行く事が出来ない。・・・
小学校で、ドロドロになっても、家に帰ってから、井戸水で手足を流すぐらいだった。・・・それが習慣になった。・・・
そんな昭和の時代のお話を・・・
以前にも話したが、晩飯を食ってから、夕方7時ごろに、おとんと一緒に、カンカン(洗面器)に石鹸、手ぬぐい、シャンプーを入れ、布袋に着替えとタオルを入れ、歩いて10分ほどの銭湯へ出かける。・・・途中、小学校の正門の前を通るが、その前が居酒屋。酒のにおいが鼻に着く。・・・運動場のブロック塀の横を通る。向かいには、散髪屋。・・その先に、この村の、一番の商店街?に、その銭湯はある。・・・この小さな商店街には、パン屋や駄菓子屋、お肉屋、八百屋、などの10店舗くらいのお店しかない。・・・それでも、十分、生活は賄える。・・・私の大好きな、おもちゃ屋兼、本屋兼、文房具屋もある。・・・今の私が、文房具好きになったのもこの店のオヤジのせい。・・・銭湯へ行くたび、ここに寄っていたから・・・(ここで、初めてシャーペンを買ったし、初めて小型計算機を買った。高額だったが~)・・・
その日も、いつものように、おとんと出かけた。・・・「ゆ」と書かれた、のれんをくぐり、下駄箱の、いつもの番号に「仮面ライダーの雪駄」を入れて、木で出来た番号札のような鍵を抜く。・・・「がらがら~」・・・扉を開けたら番台。・・・「こんばんは~」・・・おとんが、いつものようにお金を払う。・・・「あいつ、頭洗うって言うてたから、その分も取っといて~」・・・いつも、親子三人分を払う、後から来るお母んの分も、・・・女性の場合、髪を洗う時は、割増料金がいる。髪の毛が長いので、清掃する時の為の手間賃。・・・前申告制。・・・
その時、おとんがいつもと違う、オッチャン(風呂屋の大将)に気が付いた。・・・私は、このオッチャンは、苦手だった。私を見つけると、いつもちょっかいを出してくる。・・・「ドロドロやなぁ~」とか、「勉強してんのか~」とか、「仮面ライダーばっかり見てたらあかんでぇ~」とか、とにかくうるさい。・・・今日は、違った。何か、よそよそしい。・・・私は、先に脱衣所で、これまたいつもの番号の扉の箱(今でいうロッカー)に、着替えを放り込み、服を入れて行く。・・・その間、おとんがオッチャンとコソコソと話をしていた。・・・
その後すぐにやって来て、同じ扉の箱に服を入れて行く。・・・カンカンと手ぬぐいを持って中に入る。・・・(カ・コ~ン~)・・・大きな湯船と浅い小さな湯船の二つ。その周りを囲むように、みんな椅子に座って、体を洗っている。・・・壁伝いには、鏡とシャワーがずらっと並んでいる。・・・富士山のタイルの絵はない。・・・(正直、何の絵が描いていたかは、覚えていない)・・・
いつものように、湯船の淵に小さい椅子を置き、親子二人で並んで洗い出した。・・・
一見分かりにくいのだが、この風呂場の中には、緊急の出入り口がある、そこだけは、タイルではなく同じ色のペンキを塗ったドアになっている。その真ん中に、小さなのぞき穴があり、そこから風呂場の様子が見える。・・・オッチャンが、熱過ぎていないか、温くなっていないかなどの様子を見て、ボイラーの火の加減をする為の、のぞき穴。・・・非常口。・・・
その穴が、キラッと何回か光ったような気がした。・・・気になって、その事をおとんに話したら・・・「普通にしていな!、気にすんな!」・・・???・・・なに?なに?・・・知りたくてたまらなかったが、おとんの様子も変だった。・・・これは、なんかありそうだし、それでも?・・・「後で、教えてやる!いつも通りにして~」・・・もくもくと、石鹸を手ぬぐいにこすり付け、泡立てて洗い出す。・・・ただ、ただ、もくもくと下を向いて・・・
その時!・・・非常口が「バンッ!」と開いて、見知らぬ人が入って来た。・・・表からも数人が入って来た。・・・全員服を着ていたから、なんか違和感があった。・・・
私たちの右向かいで、同じように洗っているあんちゃんがいた。・・・どうやら彼は、久しぶりの風呂のようで、気持ちよさそうに、手ぬぐいを石鹸で泡立て、ごしごしと洗っていた。・・・顔は、眉間にしわを寄せ、他者を寄せ付けない雰囲気を醸し出してはいたが、次第に気を許したのか、ゆっくりと、ほんの少し笑みも浮かべて、洗っていた。・・・
侵入してきたのは、どうやら刑事らしい。・・・とっさに、おとんは私の肩を抱いた。・・・
後で聞いた話だが、指名手配の犯人が、この風呂屋に来ているという事で、刑事が張っていたそうだ。・・・その指名手配者が右隣のあんちゃんだったのだ。・・・
二人に取り押さえられ、「分かってるな!指名手配や~!」・・・あんちゃんは、裸のまま捕まった。・・・
風呂場を連れて行かれる時、あんちゃんの腰に石鹸の泡が付いているのを見た私は、「待って~!」と、風呂桶を湯船に着け、湯をすくって、あんちゃんの腰にかけた。・・・「熱っ!」あんちゃんが言い、こちらを睨んだ。・・・刑事さんが言う、「ありがたい事やな~最後に娑婆の優しさを味わっとけ~!」・・・あんちゃんは、うなだれ、軽く頭を下げた。・・・
我々が、銭湯を出るころには、いつもの風呂屋のオッチャンに戻っていた。・・・「悪かったですなぁ~」おとんと私に謝る。・・・どうやら、数日前から、あのあんちゃんが来ていて、手配書に酷似していたので、警察へ連絡していたそうです。・・・
この頃から、たとえ犯罪者でも、こころの中に、普通のこころが残ってるのかもしれないと、思うようになったのです。・・・
「罪を憎んで。人を憎まず!」・・・
だからと言って、犯罪者を許しても良いとか、死刑反対とか、そういう事ではなく、犯した者は償うという事には、反対しません。・・・ただ、同じ人間だからと言うのが、答でしょうか?・・・
今日は、昭和の昔話でした。・・・
風呂屋も良いねぇ~・・・後日談ですが、数年前にそのお風呂屋さんは、お店を閉めました。・・・「長い間、お疲れ様でした~・・・
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