白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

13路棋戦続報&本日の対局

2016年05月26日 21時28分31秒 | 対局
皆様こんばんは。
第1回13路盤プロアマトーナメント戦、土壇場で支援金総額350万円達成!
大盤解説会・懇親会の開催が決定しました。
びっくりですね。
ご支援ありがとうございました。

また、本日は対局でした。
いつものように振り返っていきたいと思います。



私の黒番、白は堀本満成四段です。
今黒△と打った場面です。
白石がばらばらになっていますが、どう収拾をつけますか?
なお、今回手所が多いためこの時点での盤面をご用意しました。
並べて確認したい場合はご活用ください。



大きい方の石を白1と助ければ普通ですが、黒も2と2子を取って弱い石が無くなります。
黒4などと連絡の薄みを狙っていく行く展開になるでしょう。




では白1、3と中に出て行くのはどうでしょうか。
やはり周囲の黒が2、4、6と自然に固まり、安心して黒8の大所に向かってしまいます。
中央に出た白石も、Aあたりからまた攻められかねません。




実戦は白1からの反撃!
これは無い手と思っていたので驚きました。
何故なら上の白石が取られてしまうからです。
次の黒の一手を考えてみてください。




正解は黒1、これが急所です。
白2からの攻め合いは黒が勝っています。




白2で手数を伸ばしておいて、白4・・・これが紛らわしい手です。
黒の正しい応手を考えてみてください。




うっかり黒1と押さえると、白2で参ってしまいます。
上下の黒がダメヅマリです。




黒1は白2で、2目繋ぐことができません。





黒1と取る手には白2、4が好手順、黒が4子繋ぐと白Aで全部取られます。




黒1と緩めるのが正着です。
黒7まで、脱出しています。




ということで白失敗かと思われましたが、7子を動かず白1と打ったのが冷静でした。
放っておくと今度こそ白A、黒B、白Cの手段があるので黒2が必要です。
そこで地としても大きな白3に回られてみると・・・何やら下辺の黒全体が心配です。
当初私が想定していた図と違い、白が主導権を握る展開になりました。
白としては予定通りの捨石作戦で、この後黒は下辺の大石に気を使って打っている間に地が足りなくなります。
最後は白中押し勝ちとなりました。

石は取られたくないものですが、あえて捨てる事によって道が開けることもあります。
石が捨てられるようになると、碁の幅が2倍にも3倍にもなりますよ!

情報会員

2016年05月25日 23時59分59秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は勝手に広報活動です(笑)

日本棋院の情報会員制度をご存知ですか?
インターネットを通して囲碁界ニュース、問題集、講座、プロの棋譜等様々なデータが得られるサービスです。

最大の売りは、プロの棋譜の詳細解説!
毎月2局の配信で、これだけのために情報会員になる価値があります。
現在の解説担当者は白石勇一六段です!
こういう事を書いていると他のコーナー担当の先生に怒られそうですね(笑)
しかし、非常に力を入れているのは事実です。

一部分だけ抜粋してみます。
第17期阿含・桐山杯全日本早碁オープン戦日中決戦
黒番、黄雲嵩(中国桐山杯)対井山裕太(日本桐山杯)戦です。
阿含桐山杯が日中それぞれで開催されているので、優勝者同士の頂上決戦ですね。
井山さんが見事勝利したのはご存知の通りです。
それでは解説内容を見てみましょう。



「ここを出られて白が困ったようですが、うまい返し技がありました。」




(参考図)「押さえるのは無理です。」




(実戦に戻って、次の手)「この手が好手でした。一種のモタレ作戦です。」




「黒としては上方につながらせるわけにはいきません。」




「ここまで先手で利かすことができます。」




「当てられてはたまらないので、この手も仕方ありません。」




(参考図、黒がノビなかった場合)「2目を取ることはできますが、白すっかり厚くなってしまいます。」




(実戦に戻って)「3手の利かしによって、押さえることができました。白のサバキ成功です。」




(参考図、ここで切ってきた場合)「切ってきてもシボることができ、傷がなくなります。」


如何でしょうか。
こういう感じで初手から終局まで解説しています。
当ブログの超強化版といった所ですね(笑)
今月はこの対局と、新人王戦から許家元三段寺山怜四段戦を解説しています。
来月は朴永訓九段対河野臨九段戦、本木克弥七段山田規三生九段戦の2局を解説します。

情報会員の料金は月額1500円(税抜)となっております。
また、幽玄の間(月額2000円、税抜)とセットで有料会員になるとなんと合計2500円(税抜)!
税抜価格で1000円引きと大変お得になっております。
まだご入会されていない方は、ぜひご検討ください。

支援御礼&本因坊戦第2局感想

2016年05月24日 21時08分39秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
第1回13路盤プロアマトーナメント戦、最終支援金額は約200万円!
総勢81名のプロ予選が開催される事になりました。
面白い碁が沢山生み出される事でしょう。
ご支援頂いた方々、ありがとうございました!

<後日追記>
実は支援金額は満額の350万円に達していました。
ありがとうございました!
<以上追記>

さて、本日は本因坊戦第2局の2日目が行われました。
振り返っていきたいと思います。



封じ手はコウ立てに受けるツギ、予想通りでした。
後の展開を考えると、ここは絶対に譲れない所でしたね。





黒はコウ材が足りないので黒1と形を整えようとします。
ここで白はAと解消せず、さらに白2の切り!
といってもプロにとっては驚く手ではありません。





すぐにコウを解消するとこのような図になります。
この時、白1の石がAにあった方が良いのは明らかです。





コウは白が強いので、結局このような分かれになりました。
白が最大限に頑張った形で、右下の損をかなり取り返しました。





そして少し進んでこの場面、白1と狭い所に入ったのが凄い!
強引に戦いに持ち込んで中央の厚みを生かそうとしています。
黒はAなどと連絡を図れば無難でしたが、気合で2、6と連打!
しかしこれは井山本因坊の待っていた展開だったかもしれません。





白3、5と節を付けてからの白7が急所の一撃!
AとBの傷を睨まれて、黒は進退不自由になりました。





白の攻めが続いていますが、白1、3と地を得しておくのも忘れません。
攻め一辺倒では凌がれた時に地が足りなくなる恐れがあります。
そして右上は先手で切り上げて再び白5の急所に迫って攻めを再開。
碁盤全体を見た打ち方です。





高尾挑戦者もこのまま押し切られるわけにはいきません。
黒△と急所に迫って反撃!
強烈な一撃と思われました。





その後手順が進み、黒△となっては白参ったか?





ここで妙手が飛び出しました。白1!
なんとも鮮やかな手筋で、これで凌いでいます。
この状態から問題に出されればプロなら誰でも分かります。
しかし、井山本因坊にはずっと前から見えていたのでしょう。





黒1なら白2以下で脱出、黒の方が危険です。





黒1なら白2が第二弾の妙手!
白6まで、見事に凌いでいます。





その後黒が態勢の立て直しを図っている所に、またしても白の手筋が襲い掛かります。
白1、3!
これまた格好良い手筋です。
黒4を誘って白5に石を持っていき、Aと出て行く展開になりました。





その戦いが進んで△の所のコウ争いになりましたが、黒1のコウ材に構わず白2と解消。
黒3と隅を生きられましたが・・・





黒大石をいじめた後右上に手を回し、白△となっては外側の黒がピンチです。
最後まで亀の甲(2目ポン抜き)の威力が発揮された形です。
これで井山本因勝利、1勝1敗となりました。

終わってみれば井山本因坊の快勝でしたね。
2日目、高尾挑戦者の明らかなミスが見えなかったのですが結果は大差になりました。
敗因は1日目まで遡るべきかもしれません。
しかし観戦者の感想としては、見所が多く素晴らしい碁だったと思います。
第3局は6月2日(木)、6月3日(金)に行われます。
お楽しみに!

封じ手予想

2016年05月23日 20時13分11秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本因坊戦第2局、始まりました!
早速1日目を振り返ってみましょう。




まずは井山本因坊の白16の手から局面が動きました。
プロが100人いれば99人は2間開きを選ぶでしょう。





実戦は白1!
一間ジマリへの外ツケは古来より打たれている手です。
しかし現代では中盤戦でサバキのために打たれるぐらいで、序盤では珍しいです。





実践例としてぱっと思いついた碁が古い碁ばかりなので、少しタイムトラベルして頂きましょう。
右下で見慣れない形が出来ていますね。
1853年、本因坊秀策(黒)対太田雄蔵戦です。
黒△のツメに開かずに・・・





白1とツケていきました。
先手を取って13にも回って忙しく立ち回りました。





今度は100年ほど経過した1960年、岩本薫(黒)対坂田栄男戦です。
ゆっくりした布石ですが、ここから・・・





白1から右辺も上辺も打つ足早な立ち回りです。
このように、シマリへの外ヅケは足早作戦です。





さて、それでは現代に戻って来ましょう。
黒1~白4まで、形からして大体こうなります。
ここで黒5、7が普通ですが、白は先ほどの図のように下辺に回ろうという事でしょう。
白A、黒B、白Cとえぐる手が狙いです。





その図で黒が悪いとは私は思いません。
しかし相手の言いなりになっているのは確かで、高尾挑戦者は不満と考えました。
そこで打った手が黒1の肩ツキ!
これまた凄い手です。
黒Aなど、外側への肩ツキは模様を消す際などに良く使われます。
しかし内側への肩ツキは深々と踏み込む手です。
気軽に打てる手ではありません。
ここから物凄い読み合いが始まりました。





黒の狙いはこんな図です。
下辺に黒が先行する事が出来ました。
白としても黒の言いなりになるわけにはいかないので・・・





白1、3と黒を切断!
ならばこちらもと黒4と反撃!
いよいよ大変な戦いが始まりました。





そして手順が進んでこの場面。
ここが最大のハイライトでした。
白△とハネられたので・・・





黒1と逃げるのは素直ですが、白2以下脱出されて黒さっぱりです。
1子シチョウで取られた所、1線を渡らされた所のつらさだけが残ります。
実戦はこうはならず・・・





黒1の逃げ出し!
しかし白2でシチョウです。
高尾挑戦者、まさかのシチョウ見損じ!?





もちろんそんな事はなく、黒1が狙いでした。
シチョウ逃げ出しのおかげでAの両当たりができています。





よって白1と両当たりを解消、黒は2、4で白7子を捕獲しました。
俗に「シチョウの逃げ出し7目損」などと言いまして、取られているシチョウを逃げてしまうのはとんでもない悪手です。
普通ではありえませんが、しかしこの碁では代償に取った石も大きいです。
この分かれだけを見て判断するなら、黒良しでしょう。
しかしここで話は終わりません。





白1からいきなりのコウ仕掛け!
右下で石を取られている分、コウは白が有利です。
この戦いが白有利になるので、やれるとの判断でしょう。





もしも左上の形が少し違ったら、コウにならないのでこの局面は黒良しです。
こんな所まで判断基準に入れていました。
どれだけ深く読んでいるのでしょうか。





その後コウ争いになり、黒△とコウ立てをした所で封じ手となりました。
ひねった手を出しようがなくて困りますね(笑)
しかし、コウ争いが複雑で悩ましい・・・半分は直感で予想します。
私の予想はAの受けです。当たる自信は5割ぐらいあります。
他に可能性として考えられるのはBのコウ解消、こちらは4割ぐらいかなと感じています。
もう一つがCでのコウ解消、これはむしろ普通の解消方法なのですが、この局面では打ちにくいような・・・。
黒は後で両当たりの石をどちらか引っ張っていく手があり、消しの手掛かりにされるのが嫌です。
ということでCは1割ぐらいという事にしておきます。

少し間違えただけで一気に形勢が離れてしまいそうな戦いです。
死力を尽くした読み合いを制するのはどちらでしょうか?
明日も楽しみです。

なお、この対局の模様は幽玄の間にて、大垣雄作九段の解説付きで中継されます。
皆様、ぜひご覧ください。

会津中央病院杯・準決勝

2016年05月22日 22時54分16秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
昨日に引き続き、第3回会津中央病院杯のハイライトを振り返ってみます。
本日は準決勝です。



1局目は謝依旻女流本因坊(黒)対鈴木歩七段の対戦です。
序盤から鈴木七段がひたすら堅く打ち進め、後半勝負になるかと思われていました。
しかし黒△となった場面、重大な転機が訪れました。





白1、3としっかり守っておけば普通です。
しかし黒4に回って形勢は黒が良さそうです。





そこで実戦は白1とツギ!
当たり前の手に見えるかもしれませんが、実際はかなりの勝負手です。
自分の石も危険ですが、黒を切り離して頑張っています。





相手がぎりぎりまで踏み込んで来た以上、謝さんとしては当然黒1と反撃!
決戦に突入しました。
これは殴り合いなどではありません。
殺し合いです。





激戦の結果黒が白の塊2つを取り、白が黒石の塊1つを取る振り替わりに。
2つ取った黒が良く、謝さんの決勝進出が決まりました。




もう1局は青木喜久代八段(黒)対王景怡会津中央病院杯の対戦です。
ここで白△と打った手が凄い!





何故なら黒1と切られて2目助けられないからです。
助けようとすると下の石が取られてしまいます。





白2と抜く一手で、振り替わりになりました。
思い切った打ち方ですが、2目抜いては黒が良いでしょう。
ひょっとしたら何か錯覚があったかもしれません。
しかし連覇への執念か、ここから物凄い頑張りを見せました。
白4と渡りを止めたのも強引に思えましたが・・・





乱戦の結果、黒の上下を切り離し、白Aの切りも打った上で白△と大場に先行!
これでまた勝負はわからなくなりました。





しかしここから青木八段が力を出します。
最後は右辺の白大石を仕留め、勝ちを決めました。

決勝は6月17、18日に女流棋戦唯一の2日制で行われます。
腕力自慢の両者ですから、激しい戦いになるでしょう。
ご期待ください。

また、明日からは本因坊戦第2局が行われます。
幽玄の間で中継されますので、ぜひご覧ください。