*成島秀和作・演出 公式サイトはこちら 王子小劇場 5日まで
今回が劇団初見。客席両サイド、あいだの通路にまでどんどん椅子がおかれてみるみる身動きできないほどの大盛況に。
原子力発電所のある地方の小さな町、「浜和町町役場」の事務室が舞台である。上手にデスク、下手には受付カウンターやソファなど。町には原発パビリオンがあり、町役場との共催で「エコフェス」なるイベントを間近に控えて、町役場職員やパビリオンのコンパニオンはもちろん、原発の職員、町内会長も忙しく出入りしながら準備に余念がない。冒頭、舞台中央の上部にある円環からひとりの女性が顔をのぞかせ、自分が7歳のころに起こったある事件について告白をする。それはカルト教団の集団自殺のようでもあり、神話的な神隠しのようでもある。村の人全員が海に溶けてしまったのに、少女だけが生き残った。しかも村人たちは少女に導かれて海に入っていったというのだ。この少女こそ、前述の町役場職員「宇見さん」であり、天涯孤独になった宇見さんは施設で成長し、町役場職員として一生懸命働いている。
エコフェスの実行委員会が、実は原発で大事故を起こす計画をしていることが早々に示される。彼らは原発を憎み、町からなくしたいと願っており、事故で多くの人々が命を落とすことによって原発の危険性を訴えるというのだ。 計画は前述の宇見さんには知らせず進行しているが、彼女の過去に興味をもつライターが町を訪れ、彼女が計画を知ってしまったことから、物語は予想外の展開をみせはじめる。
彼らの様相は狂信的カルト集団や学生運動の残滓を感じさせ、登場人物の相関図、力関係にもさまざまな作劇の工夫がされて飽きさせないものの、、「革命」を口にしながら自分の保身に懸命だったり、複数の男を手玉にとる女がいて、それに翻弄される男たちがいて、妻に暴力を振るう夫と、そこから逃げようとしていながら計画には協力的な妻がいたり、計画にほころびがでて破たんし、グループが崩壊する過程が「原発で大事故を起こす」というテロリスト並みの計画に対して、いささか小さいように思う。
終幕、彼らが宇見さんをスケープゴートに仕立ててしまうくだりに混乱する。7歳の少女に導かれて海の藻屑と消えた村人たち、成長した彼女に導かれてテロを起こそうとしたと証言する人々、そして今度は彼女が消えてしまった。2つの大きな軸をひとつの舞台で描くことのむずかしさと可能性が示されており、自分のこゆび侍デヴューはいささか複雑なものとなった。
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