因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

NYLON100℃『犬は鎖につなぐべからず』~岸田國士一幕劇コレクション~

2007-05-21 | 舞台
*岸田國士作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ潤色・構成・演出 豆千代和装監修 井手茂太振付 青山円形劇場 公式サイトはこちら 6月3日まで
 岸田國士の7つの短編を、ひとつの町内に起こる一連の出来事として構成した舞台なのだという。そんなことできるのかな?と思ったが、いや見事なものでした。ナイロンによる岸田國士の世界(としか言いようのない)のおもしろさよ。そうか、こういうやり方があったのか!

 岸田國士作品は、一昨年秋に新国立劇場小劇場で上演された『屋上庭園・動員挿話』の記憶が鮮やかである。書かれたのは大正や昭和初期なのだが、古びた話にはまったく思えず、夫婦、友人、あるじと奉公人などの会話には、人の心が通い合うことの温かみと同時に、通い合うからこその悲しみが感じられた。どちらかと言うと後者の方が強いだろうか。人は自分だけでは生きていけない。しかし他者と触れ合うことは喜びよりも悲しみをもたらすこともある。それでも人は人を求めてやまない。終演後は誰かと話したいような、でもきっと話は弾まず、気まずい空気になりそうな、複雑な心境であった。自分はそういうのが結構好きだけれども。

 ナイロンのカーテンコールは拍手が鳴り止まず、アンコールもあった。作者のケラも出て来て嬉しくなり、一生懸命拍手した。劇場は生き生きした空気でいっぱいだ。本作は現代風にアレンジした舞台ではない。相当なおふざけ場面もあるのだが、決して茶化しているわけではないのである。作品に対する敬意と、自分たちの舞台を作るという心意気に溢れている。 出演俳優は客演も含め、和装の着こなし、所作、台詞、いずれも達者で、よく稽古の入っていることが感じらる。自分の演じる役、作品、舞台ぜんたいへのきちんとした理解がないと、こうはできないだろう。特に印象に残ったのは『驟雨』の松永玲子。『驟雨』と『ここに弟あり』の廣川三憲、『隣の花』と『紙風船』のみのすけ。

小粋な装丁のパンフレットは、これからゆっくり読もう。 そして猛烈に岸田國士が読みたくなった。できれば明日は図書館にダッシュできますよう!


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