因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

OM-2×柴田恵美『傾斜 Heaven&Hell』

2020-02-16 | 舞台

*真壁茂夫構成・演出 柴田恵美振付・共同演出 劇団サイトはこちら特設サイトTPAM Fringe参加作品 日暮里サニーホール 16日終了 これまでの同劇団関連記事はこちらをスクロール 
 OM-2とコンテンポラリーダンサーの柴田恵美グループとのコラボレーションは、一昨年の『ハムレットマシーン』と同じ日暮里サニーホールでの公演である。日暮里駅から徒歩1分の好立地にあるホテルラングウッドは、地上14階の立派なホテルの4階である。訪れた日は結婚式も行われており、賑々しく華やかな空気、清潔に整えらえた設備は、当然ながらホテルそのものである。日暮里サニーホールは、その4階にあり、高級車の止まるエントランスからエスカレーターで上に上り、ロビーで開演を待つのは不思議な感覚だ。観客も老若男女さまざまで、いかにも演劇の観客然としておらず、何の集まりかわかりかねるところに安心感があり、不思議な感覚はここにもある。

 場内にはタイトルのごとく前方の壁面ほぼいっぱいの幅の巨大な傾斜が作られている。そこを昇ろうとしてずり落ちる女性たち(照明が暗いため、表情がほとんど見えない)、壁の上にいる人々、下で電話をする医師らしき男性、鉄板やナイフを弄びながら、何かを発しようとしている男性(佐々木敦)。何らかの物語の枠や人物の設定などはなく、「演劇とはこういうもの」という既成概念を疑い、自由な身体と精神、決して妥協せず、表現を探求しつづける気迫に溢れる。そして開演するや、客席は高い緊張と集中をもって舞台を受け止める。

 わかるわからない、おもしろいつまらないという仕分け不要不能のパフォーマンスは、自分にとってはまちがいなく苦手分野でるのに、日暮里サニーホールの日常性やニュートラルな観客の空気に緩和されるのだろうか、自分でも気づかない感覚を呼び覚まされたかのような爽快感を以て帰路に着けたのであった。

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