1 江戸へ行かせてほしいと申し出た龍馬(福山雅治)に、父親(児玉清)が暴れ川の堤防作りの差配を言い渡す。これができれば合格ということだ。下士の生まれとは言え、岩崎弥太郎(香川照之 ちょっと汚し過ぎでは?)に比べれば龍馬は随分恵まれた環境にあると思う。お坊ちゃん、若造である。赤貧洗うがごとしの百姓たち、しかも日頃から仲の悪い村の者同士をまとめていくことなど、いい大人でも難しいだろう。そこをいかにやり抜いていくか?これが今回の大きな見どころである。
どうすれば無事に堤防が作れるかを龍馬が部屋で思い悩む場面は1月2日のNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」スペシャル版でも取り上げられていた。眼目のシーンである。だがこのあと龍馬は酒とつまみを提供して百姓たちの懇親を図り、三味線をつまびいて歌まで歌うが周囲は白けるばかり。風車で何かうまい工夫を思いついたに違いないと期待してしまうのは、こちらが単純すぎるのだろうか。
未熟な主人公の懸命の熱意にほだされて、周囲の人々が次第に心を開き、協力していくという場面は大河ドラマに限らず、いろいろなドラマで描かれていて、自分はそういう場面に気持ちも涙腺も結構弱いたちである。気持ちが通じ合ったのだ、頑張った甲斐があったじゃないか、よかったね!と主人公に駆け寄って共に喜びたいのだ。それが今回はできなかった。ベタで過剰な説明がほしいのではなく、 たとえば男手がなく、堤防作りが生き死にに直結する母と幼い娘を登場させたこと、この母子が非常に言葉少なだったことはよかったと思う。だからこそ、お百姓たちの心を動かす何かがひとつでもいい、見たかったのだ。
その人のいうことが納得できるからという理詰めではなく、その人が纏う空気、醸し出す雰囲気に惹かれることは現実にあることだ。微妙で繊細な、けれど確実に感じる、言葉では表現しがたい何か。その何かを龍馬という人は持っていたのかもしれない。龍馬について自分は確固たる印象を持っていない。それが今回の大河ドラマでメリットになることを願いつつ、次回は江戸へ向かう龍馬を楽しみにしていよう。
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