*デヴィッド・オーバーン作 谷賢一翻訳、演出 公式サイトはこちら 渋谷SPACE EDGE 12月12日のみ
行こう行こうと思いながら足を運べずにいたDULL-COLORED POP(以下ダルカラ)の公演だが、『プルーフ』という作品には不思議と縁があるらしい(1,2)。ダルカラは10月の『プルーフ』上演を区切りに活動休止していたが、再演の希望が多く寄せられ、今日1日限りのアンコール公演が実現したもの。ダルカラデヴューが「これでしばらくさよなら公演」になってしまったのはとても残念で、出遅れの腰の重さが悔やまれる。小さな劇場は満員の客入りで、ダルカラに対する思いの熱さが上演前から溢れんばかりであった。新参者の因幡屋、この熱気についていけるだろうか?
本作について、自分は「手堅く手強い」という印象を持っている。登場人物は僅かに4人、過去と現在が行き来したり、既にこの世にいない人が濃厚な存在を示したり、とても演劇的な作品である。正面からきっちりと取り組めば、作り手側には相当な手応えが得られるだろうし、その実感はみる側にも伝わりやすいと思う。ただ演出家や俳優が自分の個性を前面に出そうとするとやんわり拒絶され、あまり遊べない、いじれないタイプの作品ではないだろうか。
ロビーで販売していた過去公演の台本のリストをみると、ダルカラの活動は谷賢一のオリジナルを中心にしながら、前述のような外国作品にも取り組んでおり、谷の脚色や演出による外部上演も多い。その中でも今年はじめにみた『ソヴァージュばあさん』は心に深く残る舞台であった。
谷賢一翻訳・演出による『プルーフ/証明』は、最小限に抑えた舞台美術のなかで、4人の俳優がずっと客席の視線に晒されながら2時間20分を力いっぱい走り通した。奇をてらわず、戯曲の難しさから逃げない正攻法の作りであったと思う。では個性が感じられないわけではなく、4人それぞれ演じる人物と誠実に向き合いながら自分の個性をある場面では慎重に、別の場面では大胆に生かそうとしており、それがとても好ましく感じられた。正直に言うと、この物語の登場人物いずれも自分は共感を覚えにくく、特に主人公のキャサリンについてはどうにも受け入れられず(好きになれないということです。簡単に言えば)、彼女に振り回される姉クレアに同情しながらもキャサリンが姉を厭う気持ちもわかり、物語に対する自分の視点を決められないのである。その感覚は今回もやはり拭いされなかったが、それだけにこのカンパニーによる新しい舞台を見たいと強く思った。
活動休止といっても、当日リーフレットをみると谷賢一はじめメンバーの今度の活動予定は目白押しのようである。たった1日のアンコール公演に出会えた幸運を感謝して、次の出会いを楽しみにしている。
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