因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

野鳩第11回公演『アイム・ノット・イン・ラブ』

2006-10-30 | 舞台
*水谷圭一作・演出 中野ウエストエンドスタジオ 公式サイトはこちら。公演は29日で終了。
 野鳩初体験。JR中野駅からアーケード街の賑わいを抜け、新井薬師の商店街に入ると急に静かになる。先週の高円寺、阿佐ヶ谷とも違う不思議な雰囲気の町だ。

 学生服姿の少年3人が登場、彼らは兄弟で母親を探す旅を続けている。その途中でこれもなぜか学生服の老人に出会い、老人の住む村を訪れることになる。3兄弟の末っ子欠(かける)が老人の孫娘ひばりに恋をする。ひばりは兄弟の探す母親にそっくりだが、別人だという。ひばりは恋をするとどんどん年をとっていくという病いに冒されており、しかも恋する相手の寿命を吸い取ってしまうのだそう。ひばりを外に出すまいとする彼女の姉妹たち、身を引こうとするひばり。それでも構わないという欠と共に、ひばりは村を出る。雨上がりの空には美しい虹が。

 予備知識はユリイカ掲載(2005年7月号)の小劇場特集記事のみ。アンケート項目にある「純粋な一般客」として舞台をみた。登場人物はどこの地方かわからないが、方言でしゃべる。その口調も動作も独特で、登場人物の誰かに感情移入や話の展開に身を乗り出したりすることもなく、まったりした気分になってしまう。客席は8割の入りだったろうか、妙に静かで、これも独特。舞台装置は一見チープだが、牛の花子には人間二人が入るかなりの大きさであるし、道に生えている草や木々の緑もよくよく見ると、素材は何かと思うほどしっかりした作りである。ラストの虹の仕掛けにもちょっと驚いた。あれはどうやって作るのだろうか。手を取り合って橋を渡るひばりと欠に少し心が揺すぶられる。ほんの少しだが、それがなかなか心地よかった。この「ほんの少し感覚」が野鳩の魅力なのだろうか。帰りは新井薬師駅まで歩く。定休日や早じまいの多い日曜夜の静かな商店街は、さきほどの気分をそのまま抱えて家路に着かせてくれた。
(気になったことがひとつ。開演前も終演後も受付付近でスタッフが喫煙しているのは、あまり感じのいいものではありませんね。灰皿は観客のためのものだと思います)
 

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