*古川貴義脚本・演出・選曲・最後の前説 公式サイトはこちら 下北沢駅前劇場 11日で終了 旗揚げ10周年とのこと、自分が今回が2度めである(1)。前回の記事を読みかえして、自分がいかに学習能力に欠け、進歩のないものであるかがわかって軽く落胆した。舞台は美容院のスタッフルームから社会人社交サークルの運営事務局に変わったが、抱いた感想は前回とほとんど変わらないものであった。面目ない。
小野哲史が今回も複雑な役どころにきっちり応えて、俳優としてのふり幅の大きさを感じさせてくれた。不気味なまでの安定感だ。
津留崎夏子が終幕に見せる狂気に釘づけ。この女優さんがあの戯曲のこの役を演じてくれたら・・・と想像する楽しみは膨らむばかりである。
登場人物1人ひとりの性格や背景がとりとめのない会話のなかにさりげなく折り込まれており、説明台詞に聞こえない。どこかに実在のモデルがいるのではないかと思うくらいリアルである。
小野、津留崎だけでなく、出演俳優全員が与えられた役柄を自分のものにしており、過不足なく演じていて、劇作家の筆が巧みで演出が的確であり、またそれに応える俳優がいる劇団であることがよくわかる。
もっとも重大なことは、今回も上演時間が長く感じられたことであろう。ある小さなコミュニティが互いの理解不足や誤解、意見の相違のために壊れていく過程が描かれているのだが、個々の場面、やりとりの絶妙であるところや俳優の巧さにばかり目が行って、劇作家が何を描きたいのかがいまひとつ掴めなかった。いや、開演前のいわゆる「前説」は劇団旗揚げから本公演までをたっぷりと振り返るものであり、当日リーフレットにもいろいろ書いてあったけれども、語られ、書かれ、そして舞台で見せられるものが大きなテーブルの上に一気に並べられた印象で、最終的に自分はどんな料理を食べたのかわからないというのが正直な気持ちなのだった。
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