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 串カツ田中(東京都)は、ほぼ全店舗で6月1日から全席禁煙にすると発表した。居酒屋チェーン業態では初めてという。家族連れを集客する施策を進めており、来店客から子どもの受動喫煙を心配する声が多いことに配慮した。従業員の労働環境の改善にもつなげる。

 串カツ田中は、近年急拡大している串カツが主力の外食チェーンです。2016年に上場してから、3年間の売上高は13億円から55億円と成長が著しいです。理由は(1)低価格帯(2)串カツという今までになかったカテゴリーを切り開いた−という点が挙げられます。

 居酒屋が店内を禁煙にするのは、分煙や実験店舗で行うレベルでは各チェーンで行っていましたが、全体の8割以上を禁煙にする大掛かりな展開は初だと思います。売り上げにどれだけ影響を与えるかが争点になりますが、売り上げはアップするだろうと見ています。これまで居酒屋業態では禁煙にすると喫煙者のお客さまが来なくなり、売り上げが下がると見込むのが一般的でした。

 しかし、僕は逆だと見ています。日本の成人人口の喫煙率は年々下がっており、全体で19.3%です。全体の2割以下にもかかわらず、この層に注力しすぎているため、見逃しているマーケットがあるのではないかと思います。たばこが嫌でお店を避けていた層が大半を占めるにもかかわらず、そういった潜在的な顧客をないがしろにしてきたのがこれまでの外食業態だったのです。

 外食産業は市場規模が年々縮小し、1997年の29兆円をピークに下降し続けています。いくつかの要因がありますが、その一つがスマートフォンの普及だと考えます。外食産業は食べ物を売っていると思いがちですが、特に居酒屋業態は実際にはコミュニケーションする場の提供が本質的な価値なのです。それがここ数年スマートフォンの爆発的な普及により取って代わられています。

 よく若い子たちはお酒を飲まないといいますが、コミュニケーションをスマートフォンのアプリの中で完結できるのでわざわざお金と時間をかけて外食へ向かう理由がないのです。外食は店に行く理由やメリットを明確に顧客に示すことができなければ生き残れない時代がすぐそこまで来ています。自社はどうあるべきか? どういった顧客に本質的に何を提供しているのか? それを真剣に考える企業が生き残る時代なのです。

 串カツ田中の今回の決断にはその思想を強く感じます。串カツ田中の理念に「串カツで多くの笑顔を生むことにより、社会貢献する」とあり、それを本気で取り組む姿勢の現れだと思います。元々の低価格の業態の強みはもちろんですが、逆張りの戦い方で新たなファンや市場開拓するという挑戦的な経営観を感じます。今後の決算を通してその姿勢がどう評価されるか楽しみです。(上間てんぷら弁当店代表)

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上間喜壽さんは、下の記事によると、東京の大学を卒業した2009年に両親から店舗を引き継ぎ、その後法人化した「上間フードアンドライフ」(沖縄市登川)の社長さんです。若干33歳。両親が作った2億円の負債を完済し、いまでは年間売り上げ5億円を誇っているとか。

 上間弁当天ぷら店2代目、家業再建 負債2億→システム開発、売上高5億
 琉球新報 2017年5月24日 11:32

この上間社長が、串カツ田中の全面禁煙化を経営的に高く評価し、それにより売り上げがアップすると見ています。その根拠に、タバコを吸わない成人が8割以上になったことをあげているのです。無理のない業績予想だとおもいます。

にもかかわらず、「居酒屋の全面禁煙化は売り上げダウンを招く」という根拠の怪しい意見がまかり通っているのが日本です。だからこそ、上間社長の予想は貴重なのです。

タバコの煙もくもくの空気が悪い居酒屋など入りたくもない人が増えている中、以前も当ブログで書きましたが、串カツ田中は冷静で適切な判断を下したと、上間社長同様、貧乏英語塾長も考えています。タバコの煙を吸い込みたくない離煙派呑兵衛が、完全禁煙居酒屋に向かうはずなのです。

喫煙を許すことが経営を苦しめることになることを、上間さんにも、串カツ田中にも証明してほしいと願う次第です。