あっぱれ、アルゲリッチ!あっぱれ、女性演奏家たち!
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(風 ウィーンから)アルゲリッチさん初共演、なぜ 石合力
朝日新聞 2017年12月25日05時00分
名門中の名門、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との共演を長年拒み続けてきた演奏家がいる。約半世紀前にショパンコンクールで優勝し、来日も多い世界的ピアニストのマルタ・アルゲリッチさん。11月末、その彼女が76歳にして楽団の本拠地ウィーン楽友協会で初めて共演の舞台に上がった。
ダニエル・バレンボイムさんの指揮で弾いたのは、リストのピアノ協奏曲1番。楽団と火花を散らし、時には室内楽のように調和する。自由奔放、圧巻の演奏だった。彼女とウィーン・フィルを隔てていたものは何だったのか。楽屋を訪ね、本人に直接、聞いてみた。
「これまで演奏しなかったのは、女性がひとりもいないオケだったからです」
権威におもねらず、やりたくないことを拒んできた彼女なりのこだわりだった。その彼女に今回共演を持ちかけたのは、同じアルゼンチン出身で盟友のバレンボイムさんだったという。
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1842年に設立されたウィーン・フィルは常任の指揮者を置かない任意団体で、国立歌劇場管弦楽団から選ばれるメンバーは長年、男性だけだった。女性の入団を認めたのは1990年代後半から。現在は148人の奏者のうち約1割が女性だ。
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各国のオケが女性や外国人に門戸を開くなか、守るべきウィーン伝統の音とは何か。楽団長のダニエル・フロシャウアーさん(51)はその特色を「作曲家本人らと向き合いながら楽団が育んできた記憶を積み重ねたもの」と語る。ベルリン・フィルが個々の奏者にスター性を求めるのに対し、ウィーン・フィルはチームワークをより重んじる。「男か、女かは決定的に重要な問題ではありません」
バレンボイムさんは女性の参入について、「もう過去の問題」と言った。「いまでは多くのすばらしい奏者が女性団員です。今日の世界で女性なしのオケなどありえない」
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今回の演奏会でコンサートマスターを務めたのは、11年に正式団員になったアルベナ・ダナイローバさん。楽団史上、女性で初めてこの立場についた。多くの団員がオーストリア出身だが彼女はブルガリア出身。コンサートマスターの選考は、序盤では奏者の姿を隠し、音の良しあしに集中するため、ついたてのある部屋で行われたという。
セクハラ被害を受けた人たちがツイッターなどでハッシュタグ「#MeToo(私も)」と相次いで訴えるなか、ウェブスター辞典で知られる米大手出版社は「今年の言葉」にフェミニズム(女性解放思想、運動)を選んだ。演奏会は、そんな動きを静かに後押しするクラシック音楽界の慶事だった。
アルゲリッチさんは演奏会のアンコールで、ピアニストでもあるバレンボイムさんと連弾した。聴衆のだれもが、音楽を語るときに性別など無関係だと実感したはずだ。演奏後、彼女は受け取った花束から一輪を抜き取り、ダナイローバさんにさりげなく手渡した。
(ヨーロッパ総局長)
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すばらしい女性演奏家が山のようにいるのに、女性に冷たかったウィーン・フィル。それに反発し続けたマルタ・アルゲリッチ。権威におもねらないその態度にはずっと感服していました。
しかし、時代は変わりました。あのアルゲリッチが、女性がコンマスを務めるウィーン・フィルのコンサートで十八番のリストのピアノ協奏曲を弾いたのです。カッコいいですねえ。聴きたかったです(ライブCD・Blu-ray Discの発売を期待することにします)。
女性を性的対象としか見ないセクハラや性暴行。女性を一段低い存在と見る男尊女卑。すべて愚かなことです。来年は、そういうものが一掃された清々しい一年になったらと願います。
それに加えて、貧乏英語塾長、来年こそはアルゲリッチの生演奏を大分・別府まで聴きに行けるようにがんばります。
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