朝日新聞の連載も、とうとう最終回となってしまいました。
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〈高倉健撮影日誌:11完〉うるむ瞳、去りがたい現場
2012年8月8日03時00分
11月20日 門司港
ついにクランクアップの日を迎えました。ずっと待ち望んでいたような、終わって欲しくないような複雑な気持ちです。
この日の門司港は、キンと冷たい突風が吹き荒れ、お互いの声も聞こえないほどの悪条件です。海岸沿いには、イベント会場の出店のセットが20店。「焼きカレー」や「バナナの叩(たた)き売り」「海峡モダン焼き」など、地元の名物の店が本当に集まって下さいました。
門司のゆるキャラ「じーもくん」も特別参加しています。イベント会場を訪れる群衆を演じるエキストラは約300人。最後を飾るにふさわしい豪華な撮影になりました。
本物の出店ですから、観光客も集まってきます。ここに健さんと草なぎ剛(なぎは弓へんに剪)さん、佐藤浩市さんの3人が来るのです。混乱しないよう、警備には万全を期して撮影に臨みました。俳優の皆さんが現れると現場は「キャーッ」という大声援に包まれました。
撮影は無事終了し、次は埠頭(ふとう)に場所を移してラストシーンの撮影です。海からの風は更に強く、体感温度は相当低くなっています。
震えるスタッフや取材のマスコミを尻目に、健さんは「寒いねえ」と言いながらも、スタッフが用意したベンチコートを羽織ることもなく、劇中の薄い衣装のまま。みんな驚きを隠せません。さすがは「網走番外地」や「八甲田山」「南極物語」など、寒いところの得意な健さんです。
佐藤さんと健さんがお互いに心情を語り合う最も大事なシーンです。いつも以上の緊張が走ります。カメラは3台。長いシーンを数回に分けて撮りますが、2人とも相当な長セリフなので大変です。
「いっぱいNG出すことにします」と健さん。実は撮影を終わりたくないという思いを込めた冗談です。さらには「佐藤君が今日は中止にしたいって」と佐藤さんを巻き込んで引き延ばしを図ります。そんなことを言いながらも、着々とカットをこなしたお二人でした。
そして、海沿いをどこまでも歩く健さんを100メートル以上カメラが追いかけるシーンで、すべての撮影が終了しました。スタッフが隠し持っていたクラッカーが鳴り響き、監督や役者に花束や記念品を贈呈。「ありがとうございます」と一言いった健さんは少し瞳がうるんでいました。
その後も、なかなか控室に戻ろうとしない健さん。「ファンに健さまって呼ばれたよ。こんなこと初めてだよ。健ちゃんならあるけど」などと楽しそうに話しながら、いつまでもいつまでも余韻に浸っていらっしゃいました。(東宝・中村仁美=おわり)
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お疲れ様でした。読み終えて、こちらも寂しく思います。8月25日の公開日まで、あとわずか。それだけを楽しみにまいりましょう。
+++++健さんの著作集+++++
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