いやあ、アメリカにはすごい女の子がいます。刺激的です。記録しておきましょう。
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田村耕太郎の「経世済民見聞録」
ザッカーバーグを超える?20歳の才媛現る
12歳で起業、18歳でUCバークレー卒業
日経ビジネス・オンライン2011年1月18日 火曜日
シリコンバレーの新星
日本でもフェイスブックの創業時を描いた映画「ソーシャルネットワーク」が公開となった。19歳で“ザ・フェイスブック”を立ち上げたマーク・ザッカーバーグに注目が集まっているようだ。
しかし、アメリカでは既に次世代に注目がシフトしている。注目の的は、“女ザッカーバーグ”と呼ばれるジェシカ・マーである。9歳からプログラミングを始め、12歳で会社を立ち上げ、15歳で高校を卒業。18歳で名門カリフォルニア大学バークレー校(コンピューターサイエンス専攻)を卒業した。現在20歳である。
彼女の事業はソーシャルメディアではない。なんともそれが一見地味なビジネスなのだ。ベンチャー創業者たちの財務管理ソリューションビジネスだ。シリコンバレーのベンチャー創業者は、技術にはやたら詳しいが、財務には弱い創業者が多い。技術は素晴らしいものの、財務の健全性が維持できず廃業してしまう小企業が多いのも特徴だ。財務担当者を雇うステージにまでたどり着けない企業も多い。
老練なビジネスモデル
それらの企業が口座情報を入力するだけで、経費分析から資金繰りまで分析し、簡素で見やすいグラフにしてくれる。財務の「見える化」を実現するビジネスだ。「創業者には、財務の問題を気にせず、自らの技術で世界を変える事業に打ち込んでほしい」との理念でこのビジネスを立ち上げたたという。20歳の女性が練り上げたビジネスモデルにしてはすごい。彼女は小学生のころから「世界を変える」と言い続けてきたらしい。
まだ「お試しユーザー」が多く、実際にサービスを購入するユーザーの拡大はこれからの課題だ。はるかに規模の大きな競合も多い。しかし、ジェシカは「ライバルが多いのは、事業に見込みがあるから。私たちのサービスがいちばん簡単で分かりやすくて割安よ」と自信満々だ。
そして、その将来性は投資家たちから高く買われている。2010年9月に50万ドルの増資を試みたところ、シリコンバレーの高名なエンジェル投資家を中心に200万ドルを超える出資の申し出が殺到した。彼女は、そうそうたる投資家の申し出を断り、120万ドルに抑えた。これを契機に、前向きで自信にあふれる20歳の女性起業家に注目が集まったのだ。
大柄で見栄えのする彼女はメディアの格好のターゲットになり、ウォールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズ、CNBCなどアメリカのメディアでの露出も目立ち始めた。しかし、そんな状況にも浮かれることはない。彼女のブログは非常に刺激的だ。20歳ならではのチャレンジ精神と、アジア系の厳しい家庭教育の賜物だろうか、なんとも言えない老練さがにじみ出ている。
ベンチャーに失敗は許されない
彼女は「メディアに出たら、出産でもしたように、お祝いのメッセージが友人や親戚からたくさん来た。ただ、お金集めに成功しただけなのに…創業間もない多くの起業家が“目新しいもの好き”のメディアのせいで、いちばん大事なものを見失う。お金を集めるくらい、学校の成績でAを取るくらいのこと。人生で記念すべき成功をしたわけでもない。お祝いが来るたびに頭の中で『勘違いするな』と翻訳しているの! これからなの! さあ、これから新商品開発に戻るわ」と自らを戒める。
アジア系移民の出身であることにも誇りを持ち、シリコンバレーに新しい空気を持ち込もうとしているようにも見える。「シリコンバレーには失敗に寛大な文化がある。失敗は早いほうがいいと言われる。その言葉も好き。でもいちばん感謝しているのはアジア系移民である両親から言われた「失敗は許されない」という言葉。これが今まで最も嫌な言葉だった。でも今はとても賛同する。他人のお金で事業をするんだし、失敗していいわけはない。失敗できないという思いこそが、自分の生産性を上げていくの」。
「シリコンバレーでいちばん大切なのは、人材の獲得。それは私たちの課題でもある。シリコンバレーのベンチャーといっても企業風土は様々だわ。私たちは、仕事やチャレンジを一緒に楽しめる、家族のような企業風土にしたいの。人材獲得は結婚と同じじゃないかな。理想の相手に会ったら逃さないよう結婚すべき。そして家族になるのよ。今後長い時間を共有して事業に取り組む家族に。新しい人材を招き入れるときは、家族としてメンバーに迎えられるかどうかが大きなポイントよ」。必要以上にビジネスライクだったり、オタッキーだったりする人が多いシリコンバレーの風土に、長期的視点に立って家族のような風土のベンチャー企業を目指す彼女は新鮮に映る。
ハングリー精神を育てる場
小中学生のときにイーベイに刺激を受けてビジネスを考え始めたという彼女。十分若い彼女だが、「若い人に、科学を学ぶことと起業することの大切さを説いて回りたい」と、啓蒙活動にも精を出す。国会議員への銃撃事件など、本当に嫌なこともあるが、やはりアメリカは面白い。ジェシカに刺激を受けて、勉強も頑張って「私も学校を早く出て会社をつくる!」という小学生がたくさん出てくるだろう。
アメリカには、若者の向上心をさらに引き出すエネルギーがある。競争や欲望に肯定的なのだ。ジェシカも「ビジネスに競争が多いのは歓迎すべきこと。見込みがある事業だから競争相手がたくさん現れる。そして、競争を通じてさらに革新的になれるから」と言い切る。
彼女が20歳で起業できたのは飛び級制度のおかげだ。18歳で大学を卒業する頭脳を持った彼女が、高校や大学で3年も4年も足止めされたら、全く違う人生になっていたのではなかろうか。能力の差を肯定的に認め、伸びるものは伸ばしていくところが素晴らしい。全体に合わせていては、こういう飛び抜けた人材は育たないと思う。みなが横並びで安定した社会もいいが、社会を引っ張っていくリーダーを継続的に出さないと社会に活力がなくなっていく。
人間は貧しいからハングリーになるのではないと思う。社会がハングリーであることを肯定する結果、ハングリーな人間がたくさん出てくる。そして人間は、ハングリーな人間に囲まれると自分もハングリーになっていくのだと確信する。その証拠に、何代にもわたって裕福な家庭に育ちながらもハングリーな若者はたくさん居る。彼らのハングリー精神を正確に言い表すなら、地に足をつけて世界をよりよい方向に変えるために自分の能力を磨いていきたいという渇望心だ。
このハングリーさを肯定し助長していく風土に加え、英語という世界共通言語がもたらす効果も大きい。英語のおかげで、異なるバックグランドを持つ若者が、世界中から、同じ思いで、アメリカの大学やシリンコンバレーに集まってくる。彼らがそのハングリーな場で新たな触媒となり、相乗効果が増していく。 日本では若者の就職戦線がますます厳しくなる一方だ。アメリカでは、不況時こそ創業が増える。仕事がないなら、仕事は自分で創り出していく、との考えだ。
ベンチャーのメッカはニューヨークへ
最後に気になる話を。これからのベンチャーの舞台はニューヨークになるかもしれないというのだ。ニューヨークタイムズによると、ビジネスのトレンドを最も早く的中させているベンチャーキャピタリストがシリコンバレーからニューヨークに引っ越してきた。シリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル「アクセル」のパートナー、ジム・ブレイヤー氏である。
フェイスブックへゴールドマンサックスが500億ドル出資したことがつい最近話題になった。しかし彼は、それを6年ほどさかのぼる2005年4月に、先頭に立ってフェイスブックに1270万ドルを投資していた。今なにかと話題のグルーポンを支えたのも彼の投資である。
この3年でニューヨークのベンチャー15件に投資している彼は「この10年ニューヨークがベンチャーで最もホットな場になる」と見ている。それは、ニューヨークには世界最高のエンターテイメント、メディア、そして商業があるからだという。ブレイヤー氏は「これからのインターネットビジネスは、ソーシャルメディアがエンターテイメント、メディア、商業と交差するときに生まれる。まさにニューヨークこそが最適の場所なのだ」と断言する。
ニューヨークは世界最大の金融市場を抱える。つまり、有能な人材がたくさん居る。ブレイヤー氏は「ウォール街に行っている連中も、その仕事や働き方を見直す時期に来ている」という。彼は明言していないが、ウォール街で金融仲介業をやるより、自分のペースとアイデアで実業をやる方が面白い、という人物が出てくる、ということか。
冒頭で紹介したジェシカ・マーもニューヨーク出身。ニューヨークにはベンチャーを支援するベンチャーもある。本物のベンチャーキャピタリストであるブレイヤー氏のような人物がシリコンバレーから故郷ニューヨークに移るなら、彼女も喜んでニューヨークに戻ってくるかもしれない。
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やはりアメリカ。日本とはひと味違います。日本にいたら勉強できないことが山ほど勉強できて、刺激的。にもかかわらず、アメリカに留学しようとする日本の若者が減っている寂しい現状。いつから日本の若者は、こんなに内向きになってしまったのでしょう。
日本からジェシカ・マーが現れることを願わずにはいられません。
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