高倉健さんにまつわるよい話です。記録しておきましょう。
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【静岡】
健さん「すべて一流」 葵区の理容師・小川さん
中日新聞 2012年9月6日
第三十六回モントリオール世界映画祭でエキュメニカル賞特別賞に輝いた映画「あなたへ」に主演した俳優高倉健さん(81)と、静岡市葵区の理容師小川禎一さん(71)には浅からぬ縁がある。理容師として駆け出しだった二十代のころ、既にスターだった高倉さんと出会い、五年以上、髪を切り続けた。「健さんなら受賞は当然」。特別賞に誇らしげな笑みを浮かべた。
一九六〇年代、東京・渋谷区にあった文化会館三階の理髪店。高倉さんは、常連だったプロ野球巨人元監督の長嶋茂雄さんの紹介で来店した。修業中だった小川さんはそこで高倉さんの「専属」になった。
オーダーは、決まって「ブロースカット」というスポーツ刈り。任●(●は「ニンベン」に「夾」)映画と戦争映画を掛け持ちしていた時には、どちらの撮影でも違和感がないように仕上げた。刈った直後だと分からないようはさみの入れ方に気を配った。
六七年に静岡市の実家の理容店を継いだ後も、交流は続いた。月に二回ほど撮影所のある京都・太秦(うずまさ)に出向き、メーク中の楽屋や宿泊先のホテルで髪を切った。京都へ向かう途中の高倉さんがいきなりポルシェで静岡の店に現れ「小川さん、頭やってくれ」と頼まれたことも。御前崎港で船釣り中に無線で呼び出され、京都に向かったこともあったという。
京都では一緒に昼食のそばを食べたり、繁華街の先斗町(ぽんとちょう)に連れて行ってもらったりした。濃密な付き合いは五年ほどだったが「健さんは周りの人を大事にしていた。もちろん、理容師の私にもそうだった」と振り返る。
「すべてが一流。こっちが枯れるほどのオーラが出ていた。受賞は当然です」。店には今も、東京時代に撮った高倉さんとのツーショット写真を飾り、静岡から活躍を見守っている。
(天田優里)
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理容師との関係を重視する健さん、ほとんど毎日のように行きつけの理髪店に行っていたりするときもあるとか。それでも、月に2回も静岡から京都まで小川さんを呼んでいたとは驚きです。それだけ小川さんの腕を健さんが信じていたということでしょう。
ちなみに、健さんが任侠映画のスーパースターになるきっかけとなったのは、1964年公開の『日本侠客伝』。小川さんのブロースカットにわれわれファンは、健さんの魅力を見つけたとも言えます。
なお、明日放送されるNHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』スペシャルでは、いまの健さんの行きつけの理髪店が紹介され、散髪してもらう健さんの姿が紹介される模様。ファンの方、必見です。
中日新聞静岡総局 天田優里