小津安二郎初期の無声コメディ『突貫小僧』のほぼ完全な短縮版フィルムが見つかる

小津安二郎ファンにとっては、すばらしいことです。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

小津の初期作品、喜劇「突貫小僧」発見　京都国際映画祭で公開

09月06日 23:30

小津の初期作品、喜劇「突貫小僧」発見　京都国際映画祭で公開

(京都新聞)

　「東京物語」「麦秋」などの名作を生んだ映画監督・小津安二郎（１９０３〜６３年）が、初期に手掛けた戦前の喜劇映画「突貫小僧」の短縮版のほぼ完全なフィルムを、おもちゃ映画ミュージアム（京都市中京区）が見つけた。１０月１３〜１６日に市内で開かれる「京都国際映画祭」で初公開する。太田米男代表は「小津監督の隠れた業績に目を向けるきっかけになれば」と話す。

　「突貫小僧」は２９年の作品。人さらいの男が連れ出した少年のわんぱくぶりに振り回されるコメディーだ。オリジナル版（３８分）のフィルムは失われたが、家庭用に短く再編集し、幅の狭い「パテベビー」のフィルムで販売されたものの一部（１４分）が、東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵されている。

　今回、ミュージアムが寄贈品の整理中に見つけたのは、パテベビー版の２巻１組のフィルム（１９分）。フィルムセンター所蔵品では欠落していた冒頭の約５分間も残っており、タイトルカットや、子どもたちがかくれんぼに興じる場面などが描かれていた。

　太田代表は「小津監督は達観した視線で人間を見るような作風で知られるが、初期の無声映画時代は喜劇映画も数多く手掛けている。現代にもつながるコメディーのテクニックも多く盛り込まれており、楽しんでもらえるはず」と話す。

　映画祭では、フィルム映像をＤＶＤに移し、サイレント映画特集のなかで上映する。

小津作品に新フィルム　「突貫小僧」短縮版、ほぼ完全に
朝日新聞　2016年9月7日09時00分

　独特の映像美が海外でも人気の映画監督、小津安二郎（１９０３～６３）の初期の無声映画「突貫小僧」（２９年公開）の新たなフィルムが発見された。公開当時のフィルム（上映時間３８分）はいまだ行方不明で、８８年に家庭向けに再編集された短縮版（１４分）が見つかったものの、冒頭部分などのコマが欠けていた。今回、その家庭向け短縮版がほぼ完全な形で出てきた。

　６日にあった京都国際映画祭の会見で発表された。

　「突貫小僧」は、松竹にいた小津の監督１２作目にあたる。少年を誘拐しようとした人さらいが、やんちゃ過ぎる少年に手を焼いて音を上げる喜劇。小津の無声映画の傑作「生れてはみたけれど」（３２年公開）などに出演した名子役、青木富夫のヒット作だ。

　劇場用フィルムの行方は知れないが、８８年に映画評論家の山根貞男さんが発掘した９・５ミリフィルムの短縮版によって「突貫小僧」の一端がわかった。今回、九州の映画ファンの遺族が「おもちゃ映画ミュージアム」（京都市中京区）に寄贈した中に、その短縮版には欠けていた、タイトルカットや字幕、子どもがじゃんけんをする場面などが残るフィルムがあった。

　現物を確認した山根さんによると、保存状態はいいという。山根さんは「戦前の日本映画の多くが失われているが、今また新たに見つかるとは。幻の名作のフィルムが、まだどこかにあるのではと期待させてくれる」と語った。

　おもちゃ映画ミュージアムの代表で、大阪芸術大学教授の太田米男さんは「きちんと復元して、多くの人に見てもらいたい」と話す。「突貫小僧」は１０月１３日に開幕する京都国際映画祭で上映される予定。（伊藤恵里奈）

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

『突貫小僧』（1929）は、小津安二郎監督、野津忠二原案、池田忠雄脚本、野村昊撮影のサイレント映画。出演するのは、初期の小津映画には欠かせない斎藤達雄、坂本武、ならびに後に突貫小僧の芸名で小津映画にたびたび登場する青木富夫です。

いま短縮版を観ようとすると、次のバカ高いDVDを買うしかありません。

	小津安二郎 DVDコンプリートボックス
	松竹

	小津安二郎 名作セレクションV [DVD]
	松竹

アマゾンでは、今日現在、上が54259円、下が10859円もします。ゆえに、貧乏英語塾長は、名前だけ有名なこの作品を観たことがありません。この短縮版が安価にBlu-ray Discで販売されると、ファンとしてはうれしいのですが。

それにしても、製作されて87年も経つ映画のフィルムがひょっこり出てくることを考えると、その他の小津作品のフィルムが見つかることがあるのかもと期待してしまいます。とりわけ、消失したという名作『東京物語』（1953）のオリジナルネガのコピーがあったりしたら、最高です。