ロシアの国家ぐるみのドーピング問題の余波は、世界記録にも及んでいる。欧州陸上競技連盟は先月26日、欧州記録が信頼できるかを調査するタスクフォース(作業チーム)を発足させた。結果次第では、「永遠に破られない世界記録」と皮肉られる女子円盤投げなどの記録が見直される可能性が出てきた。

 「記録は100%信用でき、かつ確かなものでなければならない。だが、今は全てがそうだと言い切れないという意見もある」。7人構成の作業チームを任命した欧州陸連のハンセン会長は危機感を募らせる。今後は現役や元選手、報道関係など多方面から調査を実施。9月をめどに、変更を推奨する記録と理由を明記した報告書を役員会に提出するという。

 欧州陸連が調査に踏み切ったのには、ドーピング再検査での陽性反応が続出している事実が背景にある。国際オリンピック委員会(IOC)が実施している2008年北京五輪と12年ロンドン五輪で採取したドーピング検体の再検査で陽性反応を示した検体は、すでに100を超えた。昨年12月には、世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームが、ロシア1千選手以上がドーピングに関わったと報告した。

 ロシア選手は現在、男女合わせると屋内外の15競技で欧州記録を持つ。いずれも慎重に調べられる見通しだ。AP通信など複数のメディアによれば、1985年に女子400メートルで47秒60の驚異的なタイムを出したマリタ・コッホや、88年に76メートル80を投げた女子円盤投げのガブリエレ・ラインシュ(ともに当時・東独)の世界記録にメスが入る可能性もあるという。

 「国際陸連のコー会長とも連絡を取り合っている」とハンセン会長。一般からの情報提供も呼びかけており、欧州陸連へのメールアドレスやツイッターのアカウントも開示している。(遠田寛生)

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マリタ・コッホやガブリエレ・ラインシュの記録など、いまでは絶対に破られないものが、他にもいっぱいあります。

しかし、欧州とロシアだけに限定するのは、いかがなものか。率直に申し上げて、アメリカにもメスを入れるべきです。たとえば、フローレンス・グリフィス=ジョイナー(1959年12月21日 - 1998年9月21日)が作った女子100m(10秒49)、200m(21秒34)の世界記録がよい例です。

ともあれ、科学の進歩とともに、過去を見直すことができるようになるのなら、このあたり、全世界公平な対応を取るべきでしょう。

それにしても、過去のヒーロー、ヒロインが、そうでなかったとわかるというのは、やりきれないものです。