今日は、高倉健さんの84回目の誕生日です。
長年のファンとしては、マスコミの報道が健さんが亡くなってから映画俳優「高倉健」というよりも、人間「小田剛一」に焦点が当たっていた感があって、複雑な気持ちになっていました。個人的な想いでいえば、大好きだったのは「高倉健」であって「小田剛一」ではなかったからです(とはいえ、大好きな銭湯に行くときには、いつも「51」の靴箱に靴は入れるのですが)。
というわけで、役者「高倉健」を偲んで、健さんの映画俳優人生のターニングポイントになった『幸福の黄色いハンカチ』の中からもっとも好きなシーンをブログ上で再現したいと思います。主人公島勇作(高倉健)が、スーパーでレジ係をする光枝(倍賞千恵子)と出会う場面です。
光枝を好きになってから半年、声もかけられない勇作です(「赤いスイートピー」よりこの映画のほうが先ですから、悪しからず)。そこへ初めて話ができるチャンスがやってきます。買った品物をビニール袋に入れる光枝を必死に見つめる勇作です。
そんな勇作に、光枝のほうから話しかけてくれます。以下、セリフごとに。
最後のカットの「どうもすいません」をいう健さんのうれしそうな顔、鳥肌ものです。やっと相手が「結婚可能な女性」であることを確かめ、家族のいなかった勇作の心に明るい希望の光が差し込んだのですから、その想いはいかばかりか。
そして、デートをすることになります。ところが、雪道で滑った光枝に勇作が強引にキスをしたために、光枝が勇作と距離を置こうとします。そうなると、勇作はストーカーになってしまいます。光枝の住むアパートの前で待ち伏せをするのです。そして、有名なセリフが飛び出します。
そして、勇作は、光枝の乗るバスを必死に追いかけるのでした。
珠玉の名場面です。山田洋次渾身の傑作です。
ちなみに、最後、大量の黄色いハンカチがはためく場面を見て、あんなに黄色いハンカチがあるはずがないじゃないかと揶揄する向きがあるようです。しかし、そういう人たちに、炭鉱で生まれ育った人間のひとりとして申し上げたい。
そういう揶揄は、とんでもないことです。あそこが炭住(炭鉱住宅)で、勇作が炭鉱夫であったことを忘れてはなりません。炭鉱には安全色の黄色で染められた「旗」が大量に存在していたものです。
想像するに、勇作からはがきをもらった光枝は、一枚だけ黄色いハンカチを竿の上につけようとしたのでしょう。それが竿のてっぺんにあるハンカチです。しかし、そんな変なことをする光枝に近所のおばさんかおじさんがその理由を尋ねたのでしょう。そこで勇作が帰ってきたときにすぐにわかるように黄色いハンカチを竿の先にくくりつけているのだと事情を説明したら、光枝に同情した人たちが、炭鉱の倉庫から大量の黄色い旗をもってきて、ロープにくくりつけるのを手伝ったのです。炭住の近所づきあいの密さは、想像以上のものですから。
『遥かなる山の呼び声』(1980)・『駅 STATION』(1981)と続く高倉・倍賞の黄金コンビ(実は1977年のTVドラマ『あにき』でも共演しているふたりです)は、日本映画に残る数々の名場面を作り出していますが、そのしょっぱなが上のスーパーのシーンでした。見るだけで、勇作の必死さと健気さに涙が出ます。そして、それはまさに高倉健の必死さと健気さであったのです。
改めて、合掌。
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黄色いハンカチの数についての御賢察、心打たれました。
今日1日優しい気持ちですごせそうです。ありがとうございました。そかて合掌。