メタルフォーム鋼製型枠
現在はメタルフォームをネットで検索すると木造住宅のコンクリート基礎の型枠が代表的なものとして出て来ます。鉄道の橋
脚やトンネルの型枠など同じものを繰り返し造る場合にも利用されています。
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木造住宅のコンクリート基礎の型枠もかっては木製でしたが今はほとんどメタルフォームが使われています。施工精度が良い
ことと繰り返し使用できるので安くなる、専用の金具で組み立てるので特別な技術が不要となります。
たまたま街中で見つけた化石のような風景です。
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鉄筋コンクリートの建物は木製の型枠を組んでコンクリートを打設して作っていきますが、おそらく隣に敷地境界いっぱいま
で二階建の建物があり、そこにまた敷地境界ぎりぎりまで鉄筋コンクリートの建物を建てました。そのため1・2階部分の型枠
はそのまま置き去りになり隣の二階建の建物が解体され置き去りにされた型枠が出現しました。
公団住宅が木製の型枠で作られていた証拠の化石です
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落合団地のMUJI住宅です。木製の型枠にコンクリートを打設して作った後に後モルタルで仕上げをします。しかし吊り戸
棚を取り付ける部分はモルタルの仕上げありません。MUJI住宅では吊り戸棚を撤去していますので白くペンキを塗っていま
すが木製の型枠の痕「化石」を見ることが出来ます。(くっきりと木製の型枠の痕が残っている住宅もあったのですが残念なこ
とに写真の住宅は施工が極めて優秀で痕が判りにくいです。)
MF工法
都市機構の前身である日本住宅公団で、在来工法型枠工事の木製型枠にかえて鋼製型枠を使用することにより、未熟練工で
も組み立てられ、軀体精度を向上し、型枠工事費の節減を図ることを目的として公団の量産試験場で開発しました。メタルフ
ォームは当時はダムやトンネルのような単純な形態のものに使用されていましたが、建物は形態が複雑で繰り返し使用するこ
とが少ないので使用されていませんでした。しかし公団住宅は同一形式の住宅を大量に建設することから建設費の12%程度
を占めていた型枠工事費の節減を図ると共に熟練工の不足、木製型枠に使用される南洋材の削減にも配慮したものでした。
組立て解体は人力によることから一つの部材は30㎏以下、寸法は225㎝×30㎝を標準としました。軀体精度の向上に
よる左官工事の減少、窓枠手摺等の先付け等の合理化の効果を含め、型枠40回転償却、年間10回転使用の前提で在来工法
より5%程度建設費の低減が可能とされ昭和38年に実用化されました。
メタルフォームの使用のイメージ 日本住宅公団史から引用
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上図 基礎から5階分までの1棟分の型枠をすべて用意しておき一層ごとに隣の建物に移動する。償却に5年程度かかり住宅
のモデルチェンジが出来ない。
下図 昭和41年からの改良型。基礎1組分及び一般階2層分を用意し型枠を上階に移動し2棟同時に施行する。型枠の数が
少なくコスト的に有利となった。また丘陵地でも建設が可能となった。
MF工法は昭和50年を最後に使用されなくなりました。これは住宅1戸分の型枠が400個にも及び組み立て分解が人力に
よることから思ったほどの合理化の効果が出ない、使用回数による型枠の変形が予想以上に大きいに加え、公団の建設戸数の減
少と同じ住宅を大量に供給する時代ではなくなた時代背景の変化によるものでしょう。
以後は軀体製作の工業化はPC工法となっていきます。PC(プレキャストコンクリート)工法は地上であらかじめ作成した
3~4トンのコンクリート部材をクレーンを使用して組み立てていくものです。
鈴蘭台第五団地
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兵庫県下でMF工法の住宅が建設されたのは鈴蘭台第五団地だけです。鈴蘭台第五団地は古き良き時代の公団の理想と思想の
集大成とも言うべき大型団地であったとも言えるのではないでしょうか。なお鈴蘭台第五団地の団地配置の詩的(私的)解釈に
については小説君影小唄 3 鈴蘭ダンスホール跡(追記)君影団地(鈴蘭台第5)の電車?(2017.2.17)をご覧下さい。
色が判りにくくて申し訳ありませんが緑色・黄色で枠取りした住棟が64-5N-3K-MF-2-改の3K住宅、赤色・ピンクで
枠取りした住棟が65-5N-3DK-MF-2の3DK住宅になります。公団では標準設計として住宅に名前がありました。
採用年西暦年下2桁ーN北入口S南入口建物階数ー住宅型式ーMFメタルフォーム工法ー枝番等 となります。
64-5N-3K-MF-2-改
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メタルフォーム工法の住宅は施工精度が高いため左官工事による仕上げがありませんでした。このため壁の凸凹を隠すため
編み目の粗いアンダリヤクロスが張られていました。当時は一般的であったペンキ塗りの壁に対して、クロス張りの住宅でし
た。
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3K・3DKで共通しているのは玄関周りが広いことです。型枠の標準寸法の恩恵でしょうか。階段室の入口の袖壁はブロッ
ク積みです。階段はあらかじめ製作したPCの階段がはめ込まれています。PCですので薄くて裏側も階段状になっています。
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南面は同じようにベランダがありますが北面は階段の踊り場が出っ張っていません。メタルフォーム化に当たっての設計面で
の合理化でしょうか。
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38号棟付近の64-5N-3K-MF-2-改が集まっている区画です。地味な写真ばかりですので桜です。
65-5N-3DK-MF-2
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DとKが縦に並んだこの住宅は3LDKとして人気でした。(公団の基準では面積からLDKではなくDKです。)
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面取りされた角です。メタルフォームならではの小細工です。3Kと同じように踊り場の飛び出しがありません。
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階段はPCで製作した階段をはめ込んでいます。
現在では謎の箱ですが、ダスト・シュートの塵を受けるコンテナ車が入っていました。階段の踊り場のステンレスの板は塵の
投入口の痕をふさいだものです。かってはプラスチック製の筒があり踊り場の投入口から塵を投入できました。公団住宅では初
期から導入された近未来的な設備でしたが臭いや回収の人手の問題から順次廃止され鈴蘭台第五団地では屋外のコンテナへの持
出しとなりました。この箱もコンクリートの部材による組み立て式です。
追加資料
メタルフォームの現状と将来 能井安義 著 昭和41年
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/88/51f6645c5c4659a668180d199ff913e7.jpg)
非常に見えにくくて申し訳ありませんが、当時の様子が分かる資料です。
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