忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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新世代作家の誕生「サマータイムマシンブルース」

2005年09月02日 | 作品紹介(映画・ドラマ)

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映画ファンの間では酷評されまくっている「容疑者・室井慎次」が
「交渉人・真下正義」を上回る勢いで動員数を伸ばしている中、
「踊る大捜査線」の監督を務めた本広克行監督は
拡大増殖する「踊る」シリーズから一度距離を置き、
遊び心に富んだ小作品を仕掛けてきた。
それが、今回紹介する「サマータイムマシンブルース」だ。

最初に断言してしまうと、本作は
2003年度の「ロボコン」、
2004年度の「下妻物語」に続く、
2005年度を代表する傑作青春映画である。
2週間後に「タッチ」も公開になるが、私としては断然こちらを推したい。

物語を簡単に紹介すると・・・

SF研究会とは名ばかりの、SFを研究しない連中が野球に興じるある夏の昼下がり。
銭湯から帰ったメンバーが部室で騒いでいると、コーラがエアコンのリモコンを直撃、
リモコンでしか操作の出来ないクーラーはそれきり沈黙した。
翌日、うだるような暑さの部室にマッシュルームカットの見慣れない男が現れる。
男と共に部室に現れたのは、見た事もないバカデカい機械。
ダイヤルやレバーの作りからして、
「もしかしてタイムマシンなのでは?」と騒ぐ部員達は試乗を思い立つ。
未来に行って自分が死んでいたら・・・
過去に行って戻ってこれなくなったら・・・
思案の末、とりあえず「昨日」に行くことにした。
昨日なら、例え帰ってこれなくなっても大したことはない、
しかも、クーラーのリモコンだってまだ壊れていないはずだ。
思い切りレバーを引いた瞬間から、昨日と今日のタイムトラベルが始まる。

原作は、1998年にユニット結成。
2000年から現在の形式での活動を開始した演劇集団、
ヨーロッパ企画の戯曲である。
脚本を手掛けたのは、ヨーロッパ企画の公演でも
作・演出を手掛ける若干25歳の上田誠氏。
「三谷幸喜の再来」と言われるだけあり、脚本の組み立て方が抜群に上手い。
宮藤官九郎のような勢いで押し切るタイプではなく、
どんなにテンポを早くしても、冷静に全体を俯瞰しているタイプだ。
「ガハハ」系のお笑いより「クスッ」系のお笑いが好きな方なら
計算し尽くされた展開と落とし方の上手さに舌を巻くと思う。

タイムトラベルというSFを、
SFに本気で取り組んでいない連中が体験するというところに
愛すべき「こぢんまり感」が漂っており、
SFに精通している人間にありがちな、
「そこはおかしい」と突っ込む気持ちを萎えさせる効果を生んでいる。
馬鹿な連中が下らないことに一喜一憂しながら
昨日と今日を何度も往復するうちに、
少しずつ見えてくる時間の仕組みと、歴史の綴られ方。
それはどう足掻いても変える事が出来ないものなのか、
はたまた介入可能な代物なのか。
希望を持たせるほろ苦いエンディングに辿り着いた時、
絶対にもう一度最初から観たくなること請け合いだ。
「仕込み」にあたる最初の15分ほどは
物語の全貌が明らかになっていないこともあってか、
意味不明なシーンがぶつ切れで続くため不安になると思うが、
ここをしっかりチェックしておくと後半の面白さが倍増するので
序盤だからと流してしまわない方がより楽しめるはずだ。

唯一の不満は、SF研究会の5人+未来からやってきた1人の
男子生徒達が活き活きと描かれているのに対し、
女生徒の見せ場が少ないことだ。
特に主人公である拓馬(瑛太)と春華(上野樹里)のエピソードは
エンディングとも密接な関係があるため、
拓馬が憧れる春華の魅力をもう少しクローズアップして欲しかった。

小劇団の芝居などを好んで観に行く方はもちろん、
「やっぱり猫が好き」の頃の三谷幸喜の脚本が最高に好きだったという方なら
文句なしに楽しめる。
単館系なので上映館も少ないと思うが、
ちょっと足を伸ばしてでも観て欲しい作品だ。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:サマータイムマシンブルース
    配給:東芝エンタテイメント
   公開日:2005年9月3日
    監督:本広克行
    出演:瑛太、上野樹里、他
 公式サイト:http://stmb.playxmovie.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

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5 コメント

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個人的には (三つ子)
2005-09-05 21:35:29
この夏、一番気になるタイトルです。

比較に「ロボコン」が出てるし、絶対見に行くぜ!
返信する
余裕があったら見たいなぁ (koto)
2005-09-06 12:31:05
先日仕事に無理矢理穴を開けて、

「チーム★アメリカ ワールドポリス」を

見に行った時に予告を見て、

気にはなりました。



因みに「チーム★アメリカ…」は

皆が言うほど問題作では無く、

アメリカの言動をチョット大げさにしただけ

でした…と言ったら、友人に

「そんなことを言うのはこの口かっ!」と

グーパンされました。

小物はものすごく良くできていて、

オ○クスピリッツ全開!なところが

気に入りました。



後、気になったのは

観客が英語が解からないのか、

ほとんど笑わず、私1人でゲタゲタ笑っていた

のが寂しかったです。
返信する
む、 ()
2005-09-10 20:57:10
>三つ子殿



おぉ、御存知の方がおられたというだけで嬉しい。

「四畳半でのドタバタSF」だと割り切って

観ていただければ決して裏切られないと思う。



>koto殿



お久しぶり。

「チームアメリカ」は私も全く同意見だ。

言われているほどの過激さはない。

ギミックを楽しむというのも同意。
返信する
ヨーロッパ企画は… (すいづたくみ)
2005-09-10 21:39:31
websiteをご覧になればわかりますが、

劇団員の多くがかなりのTVゲームマニアで、

ファミコンを題材とした演劇も幾つか作ってます。

 

『ロードランナーズ・ハイ+ロー』http://www.europe-kikaku.com/projects/dvd/dvd2.htm

http://www.donet.gr.jp/~europe/projects/dvd/dvd2-1.htm

http://www.europe-kikaku.com/projects/dvd/dvd2-2.htm



 収録音声の質があまりよくないのが残念ですが、

ファミコン&男子寮の最強タッグ、傑作コメディです。

もし、ヨーロッパ企画の演劇に興味を持たれたなら、

ぜひどうぞ。
返信する
む、 ()
2005-09-12 00:06:18
>すいづたくみ殿



私も公式サイトは拝見させていただいた。

公演も、次回近くに来る事があれば必ず行くつもりだ。

情報感謝。
返信する

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