忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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映画「君たちはどう生きるか」私は40年、ずっと問われ続けてきたのかもしれない

2023年07月14日 | 作品紹介(映画・ドラマ)


▼映画「君たちはどう生きるか」私は40年、ずっと問われ続けてきたのかもしれない





というわけで、初日の初回を観てきた。
TOHOシネマズ梅田のシアター1は、ざっと見回した感じ7割ほどの入りだったのだが
初回上映終了時刻付近から各メディアで声の出演や主題歌の情報が一斉に解禁され
昨夜まで半分も売れていなかった週末のチケットが続々と埋まり始めている。

早くも『ネタバレあり』とタイトルにつけた解説記事も上がり始めているようだが
当BLOGではできるだけ私と同じようなワクワクを持ったまま劇場に足を運んでいただきたいので
「私とジブリ(宮崎駿)の40年」を四方山話と共に振り返ってみたい。(*一部内容に触れる箇所もあり)

角川映画が全盛期を迎えていた1980年代半ばの映画界では、
劇場用アニメーションにも変革の時が訪れようとしていた。
映画界におけるアニメーション=子供向け作品の流れを変えたのが
松本零士の「宇宙戦艦ヤマト」と「銀河鉄道999」だった。
「宇宙戦艦ヤマト 完結編」と、角川アニメ第1弾の「幻魔大戦」が公開されたのが1983年。
そしてアニメ界の世代交代を強烈に印象付けたのが、
翌1984年に公開された「風の谷のナウシカ」と「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」だった。
どちらもリアルタイムに劇場で鑑賞した私は、ここから時代が変わるのだろうと興奮したのを今でも覚えている。

あれから39年、ジブリ作品は全て劇場で鑑賞してきた。
初めてナウシカを見てから39年が経ち、見ている私も当時の年齢+39歳されている。
昔、シンガーソングライターのCoccoに是枝裕和監督がインタビューをしたことがあり、
その中で彼女が「『もののけ姫』のラストを、昔は『こんな世界なんて滅べばいい、花なんて枯れてしまえ』と
思いながら見ていたのに、息子を産んで、大きくなって一緒に見返した時に
同じラストシーンで『お花が咲きますように』って子供と一緒に祈ってたの」と語ったことがある。
ジブリと共に人生を歩んできたファンには、そういった歴史が無数に存在しているはず。

予想を裏切るファンタジックな世界観と、初期作品を思わせるダイナミズム、
過去の名物キャラを(おそらくは意図的に)想起させる登場人物達、
そして遺言とも受け取れる、いつになくストレートなシナリオ。
今後たくさんの考察がされるのだろうが、本作は「もののけ姫」や「崖の上のポニョ」のように
示唆に富んだ言葉は使わず、「いずれ火の海となる世界」に対し「君たちはどう生きるか」と問いかけている。
投げ込まれたボールは、とても真っ直ぐで力強い。
「いずれ火の海となる世界」という言葉は、昨年末の「徹子の部屋」にタモリがゲストとして登場した時に
「来年はどんな年になりそうですか?」と問われて語った「新しい戦前になるんじゃないですか」にも通じる。

「君たちはどう生きるか」は、本作のタイトルであると同時に
宮崎駿監督作品の全てに込められたメッセージだったような気がする。
監督はずっと私たちに「君たちはどう生きるか」と問いかけていたのではないか。

『荒廃した世界で気高く懸命に生きる少女を通して』
『雲の上に浮かぶ都市を夢見る少年と空から降ってきた少女を通して』
『キザでオシャレな賞金稼ぎの豚を通して』
『汚れなき眼で呪いを祓わんとする少年を通して』
『魔女の呪いで90歳の老婆に変えられてしまったヒロインを通して』
『5歳の少年と5歳の魚の女の子を通して』

子供から大人まで一緒に楽しめるファミリー向け作品のイメージを維持したまま
ずっと観客に問い続けてきたのかも知れない。
そう思って過去ログを漁っていると、2013年9月に開かれた引退会見のまとめ記事が出てきた。
そこにこんなやり取りがあった。以下に抜粋する。

質問「1984年に公開された「風の谷のナウシカ」の続編を製作する予定はあるか」
宮崎「これはありません」

質問「今回の引退宣言は本気です、ということですが、今回は今までと何が一番違うのか」
宮崎「『風立ちぬ』は『ポニョ』から5年かかってます。
今次の作品を考え始めますと、多分もう5年じゃ済まないでしょう。
6年かかるか、7年かかるか。
あと3ヶ月もすれば私は73歳になりますから、そこから7年かかると80歳になってしまう。
僕の長編アニメーションの時代はもう終わったんだと。
もしやりたいことが浮かんだとしても、それは世迷い言として片付けようと思っています」

質問「全作に通じるメッセージなどはありますか」
宮崎「僕は児童文学に影響を受けた人間ですので
この世は生きるに値するんだといことを子ども達に伝えなければならないと。
それは今も変わっていません」


つまり、前回の引退宣言の時に発していた言葉にケリをつけたのが
「君たちはどう生きるか」なのだろう。
「今から作ると80歳になってしまうから辞める」と宣言した宮崎監督は現在82歳。
完成に漕ぎ着けるまでに、どれほどの気力・体力を消費したことか想像もつかない。
過去作品の名シーン、名カットをこれでもかと散りばめた本作は
マニアックな視点からも存分に楽しめるし、
さらっと絵を眺めるだけでも「THE・ジブリ」を堪能できる。
ジブリの歴史を走馬灯のように蘇らせる、ファンサービス的な意味合いの強い作品なので
「ジブリと生きてきた」と思っている人は、ぜひとも劇場で監督のメッセージを受け止めてほしい。

映画「君たちはどう生きるか」は本日(7月14日)より公開。




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2024年07月03日発売■Blu-ray:君たちはどう生きるか [4K ULTRA HD+ブルーレイ]
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2024年07月03日発売■Blu-ray:宮﨑駿と青サギと… ~「君たちはどう生きるか」への道~



宮崎駿監督復帰作であり、本年度のアカデミー賞で最優秀長編アニメーション賞を獲得した
「君たちはどう生きるか」が2024年7月3日にBlu-ray発売決定。
引退撤回から7年という歳月を費やして完成した作品の本編は4K版も同時発売。
Blu-ray・DVDでは、7年に及ぶ制作期間に密着した2時間のドキュメンタリーで
NHKにて放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮﨑駿の2399日」に
放送では使われなかった映像を追加収録した「宮﨑駿と青サギと… ~「君たちはどう生きるか」への道~」も発売。
「君たちはどう生きるか 特別保存版」は本編とこちらのドキュメンタリーがセットになったBOXなので
裏側とセットで気になる方は「特別保存版」を。




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発売中■書籍:スタジオジブリ物語 (集英社新書)/ 鈴木敏夫
07月26日発売■CD:地球儀 / 米津玄師
08月09日発売■CD:君たちはどう生きるか サウンドトラック / 久石譲
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「風の谷のナウシカ」から始まったスタジオジブリの歴史を全て知る
名プロデューサー・鈴木敏夫氏が執筆した40年間の物語が発売中。
米津玄師の歌う主題歌「地球儀」は今月26日、久石譲のサウンドトラックは8月9日発売。

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配信中■Amazon全体:スタジオジブリ 関連作品一覧

私の好きなジブリソング歴代1位は、倍賞千恵子の「世界の約束」(ハウルの動く城)。



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10 コメント

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「君たちはどう生きるか」を観てきました ()
2023-07-15 00:37:20
こんばんは。^^
ナイターから帰ってきたら、
映画を思い返して、メタファーやメッセージを勝手に推し量り、
忍さんのところに投稿するのが、ルーティーンになっておりますよ。^^

さて、
何を書いてもネタバレになってしまうので、非常に難しいのですが・・
私はもう、今、非常に安らかな気持ちです。
あれは完全に、宮崎監督の遺言ですよね。

監督と一緒に、走馬灯を観たという感じでしょうか。
いろんな過去作品のオマージュ?が再演され、当時の気持ちや感情をぐるぐる思い出しました。
こんな風に感情を揺さぶる映画、今までなかったですよ。

直近のジブリファンの方も十分楽しめるのでしょうけれど、
長いことジブリを観てきた人にとっては、
観る人と作る人の関係を信頼した映画になってるんやな、と思いました。
ほんと凄いですね。

偉そうな気持ちは全くないですが、自称いち映画ファンとして、遺言を受け取りましたよと。
そういう気持ちです。
同時に、今度こそ宮崎監督の引退宣言を受け入れんとあかんのやね・・、
と寂しい気持ちもしています・・。

お疲れさまでした。ありがとうございました。>宮崎監督
きまぐれで、短編作ってください。^^
返信する
感無量です (きうら)
2023-07-15 01:25:16
こんばんは。いつも楽しく拝見しています。

私もレイトショーで観てきました。ナウシカと小学校の映画観賞会(笑)で出会った私にも、色々考えさせられる2時間余でした。

昔の記事で「創作の限界は宮崎駿監督で決めたい」という旨を書かれていたことがとても記憶に残っています。

今回「おしまい」は無かったですね。ある意味そこに感動しました。限界はまだまだ......!
返信する
Unknown (ni.o)
2023-07-15 07:39:17
コメント失礼します。

スタジオジブリと宮崎駿の
40年間の歩みを走馬灯の
ように駆け巡る2時間でした。

ずっとジブリ作品を観てきた
ファンへの宮崎駿からの
最後の置き土産ともいえる
作品になってましたし
最後に米津玄師の主題歌が
流れる所までもが新世代
へのバトンタッチにも
受け取れて、見事なまでの
最終作に仕上がってて
ただただ脱帽でした。
返信する
mさん ()
2023-07-15 19:53:53
こんばんば。

>私はもう、今、非常に安らかな気持ちです。
>あれは完全に、宮崎監督の遺言ですよね。

そうですよね。
これまでの主人公は(千尋はまぁ特例としても)
基本的に皆快活で正義感が強かったのに
今作は嘘をついてしまう弱い少年。
そこにグッときました。

走馬灯的な演出が許されるのは
世に出た作品の大半が、多くの人に愛された実績があればこそですよね。

>きまぐれで、短編作ってください。^^

私も同じ気持ちです。
返信する
きうらさん ()
2023-07-15 19:55:56
こんばんは。

こんばんは。いつも楽しく拝見しています。

私もレイトショーで観てきました。ナウシカと小学校の映画観賞会(笑)で出会った私にも、色々考えさせられる2時間余でした。

>昔の記事で「創作の限界は宮崎駿監督で決めたい」という旨を
>書かれていたことがとても記憶に残っています。

ありましたね。
ご自身で決めたゴールポストをあえてずらしてまで
かけただけのことはあったなと私は思っています。

>今回「おしまい」は無かったですね。ある意味そこに感動しました。限界はまだまだ......!

あ、本当だ。そういえばなかったですね。
作品全体が「おしまい」を発していたといえば、そうなんですけどね。
返信する
ni.oさん ()
2023-07-15 19:58:14
こんばんは。

見終わってすぐのツイートに「満足」だけじゃなくて
「満腹」を添えた気持ちは、おそらく多くの方が今感じているんじゃないですかね。

米津の主題歌は、少しだけ追記にも書いたんですが
「パプリカ」を聞いてオファーした宮崎監督からすれば
若干テクニカルに走りすぎていて、どうだったのかなあとは思っています。
いい曲なんですけどね、でも「海の幽霊」がもう天才としか言いようのない
ハマり具合だったので。
返信する
見てきました。 (K)
2023-08-27 17:47:16
こんにちは。今日見てきました。
もののけ姫と千と千尋の神隠しくらいしか見たことがないのです、実は。トトロ、ナウシカ、ラピュタ未見の映画ファンです(恐い)。
あの鳥?の変なビジュアルに魅かれて。どう生きるかって、この鳥なあに?といった感じで。

もうネタバレでもよいでしょうか。
最初はなんだかさっぱり分かりませんでした。
このまま終わってしまうのかなと不安でした。
目まぐるしく脈絡なく、なのに妙に張り切っていて。
でも終わりには感動していましたよ。
そういえば、母を失くしふさぎ込んで涙ぐんでるだけの少年が、いつの間にか世界の調和を守る知恵と勇気と行動力の青年になっていました。
あの目まぐるしく脈絡のないカオスにどんな効果があるのか、まだ腹落ちしてないですが。

君たちはどう生きるか。
自分なんてと卑下するな。(奇しくも同じ響きですが)想像力と創造力は無限大だぜ、と呼びかけているように思いました。

帰り道に思い出した映画がふたつあります。
いつの間にか世界の調和を守る知恵と勇気と行動力の青年になる話は、レディ・プレイヤー1。
目まぐるしく脈絡のないカオスこそが何物にも代えがたい自信の源である話は、エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス。
いい映画はいいですね。
返信する
Kさん ()
2023-08-28 18:12:11
こんばんは。

ご覧になったのですね。


>最初はなんだかさっぱり分かりませんでした。
>でも終わりには感動していましたよ。
>自分なんてと卑下するな。(奇しくも同じ響きですが)
>想像力と創造力は無限大だぜ、と呼びかけているように思いました。

私も全く同じです。

この映画について様々な検証や解説が上がっていて
多くの人が「わからない」というのを見かけるんです。
でも、映画ってそんなに全部全部解説されて
行間の意図までわかった上で楽しまなければいけない
窮屈なものなのかなあと思うんです。

鑑賞後に補足する意味で多くの情報を求めるのは悪いことではないけれど
みんなもっと自分の感性を信じようよって。
そしてなんだかわからなかったとしても
結果が面白かったならそれでいいじゃんっていう(笑)
リンチの頭の中なんて私には未だにわかりませんし
トリアーも毎作わけがわかりませんけど全部面白いですよ。
それでいいんじゃないかなあと。

「君たちはどう生きるか」も、きっと監督の頭の中には
辻褄の合う設定があるんだとは思うのですが
それを全部聞かされなくても、今の自分の感じた部分だけでも
十分面白かったです。
解説過多な世の中だからこそ、シンプルに自分の頭に集中するっていうのも
映画を楽しむコツかなあと、年寄りとしては思います(笑)
返信する
Unknown (K)
2023-09-02 12:21:20
経験値や知識や考察の蓄積がハンパない忍さんに「調べ上げてもしょうがない」
と言われてしまっては世の能書き垂れは立つ瀬がないですね(笑)。
知識があれば理解が深まり感動が深まるのはもちろんですが、
それよりも大事なのは個人として向き合い感じること、ということですね。

犯罪や不道徳も表現としてときに評価されるのは、
家族や友人などリアルコミュニティにも容易には明かせない、パーソナルな心の奥をゆさぶる何かが、
時空を超えてやってくる奇跡があるからですね。

そういった意味で、私は某男性アイドル事務所の件をフィクションとして作品化してほしいです。
法律やジャーナリズムにより制度的客観的に整理してゆくことは重要ですが不十分のように思います。
不道徳な犯罪がこの国のど真ん中で長年堂々と放置されてきたことは、
敵とされた側を断罪して終わる話ではないと思います。
作品化されれば、事実と違う、視点がおかしいなどなど意見が出ると思います。それこそが大事。
フィクションには多くの人が自分の心に照らし合わせるパワーがあるはず。
懸命に生きている人を救うのは、ときには白黒判定することではない、
フィクションの力に縋ってみるのもいいと思います。
返信する
Kさん ()
2023-09-02 15:58:26
こんにちは。

別にそんないやらしい意味では書いてませんよ!(笑)
情報をたくさん仕入れるのもいいとは思うんですが
最近本当にみんな意味を求めすぎるというか
「丸裸で臨む」っていうことを恐れすぎじゃないかなあって思うんです。

>私は某男性アイドル事務所の件をフィクションとして作品化してほしいです。
>法律やジャーナリズムにより制度的客観的に整理してゆくことは重要ですが不十分のように思います。

私もこれは考えてました。
もしかして、もうNetflixあたりが動いてたりしないかなとか。
日本の芸能界はほとんどがジャニーズに骨抜きにされていますが
「新聞記者」にアカデミーを獲らせた映画業界だけは
割とまだ自浄作用も残っていると思うんです。
ですから、既に企画を考えている映画人はいるかもしれませんし
オファーがあれば引き受ける、気骨ある監督も
結構多いんじゃないですかね。
返信する

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