▼映画「ベルヴィル・ランデブー」大人にはビターチョコレート
*本記事は2005年1月9にアップされた紹介記事をリバイバル上映を記念に加筆したものです。
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アニメ界の巨匠と呼ばれる人々の新作が次々に封切られた2004年、
一応全ての作品を劇場で観たのだが、結局、私の心に強く残ったのは
押井作品でも大友作品でも宮崎作品でもなく、湯浅政明監督、スタジオ4℃制作の「MIND GAME」だった。
「MIND GAME」は、育ち過ぎたイメージに縛られ身動きがとれなくなってきた
巨匠達を笑い飛ばすかのような自由度に溢れた、アニメ界の世代交代を印象づける作品だったように思う。
そして2005年(公開は2004年末だが)、今度はフランスから凄い奴がやってきた。
彼の名はシルヴァン・ショメ。
長編作品を手掛けるのはこれが初めてという「ベルヴィル・ランデブー」は、
「MIND GAME」をも超えるインパクトを私に与えた。
内向的な少年シャンピオンと、孫想いの祖母スーザ。
ある日、シャンピオンの日記から自転車への憧れを知ったスーザは、
三輪車をプレゼントしてみたところ、シャンピオンは大喜び。
その日から、ツール・ド・フランス出場への夢が大きく動き始める。
過酷なトレーニングに耐え、逞しく成長したシャンピオンはついに念願の出場を果たす。
しかし、シャンピオンを含めた3名の選手が競技中に誘拐されてしまう。
スーザは愛犬ブルーノを連れシャンピオン奪回のため立ち上がる。
チラシやポスターの雰囲気からして
もっとムード優先で見せるタイプの映画かと思っていたのだが、
ありったけのアイディアを詰め込んだ上質のカートゥーンであり、
フランス人らしいブラックジョークが満載の大人向けの映画であった。
オープニングのベルヴィル三姉妹のステージシーンでは、
手塚治虫作品を思わせる演出法が目白押しで思わずニヤけてしまう。
この映画はアニメ好きな人というよりも、
アニメが好きだった頃のある大人にこそぴったりなのかも知れない。
本編は70分と短めなのだが、よくぞここまでと思うほど様々な映像表現を詰め込み、
活劇として必要十分なイベントを盛り込んだストーリーを組み立て、
少しの皮肉や残虐さを隠し味にちらしてある。
観終えて「本当に70分だったのか」と思うほどのボリューム感があった。
そして、驚くことにこの映画、台詞というものがほとんどない。
テレビ番組のアナウンサーなど、ナレーター的立場のキャラクターには
ちゃんと台詞が用意されているが、肝心の主要登場人物達はほとんど喋らない。
けれど鑑賞中、そのことが気になることは一度もなかった。
デフォルメされまくった動きの中に、
下手な台本の何百頁分にも匹敵する感情が込められているからだ。
直輸入のBlu-rayを購入し字幕なしで鑑賞したとしても何の問題もなく楽しめるはずである。
この辺は、チャップリンなどのサイレンスムービーが好きだったという
シルヴァン・ショメ監督独特の演出方法と言えるかも知れない。
私は今敏監督の「東京ゴッドファーザーズ」という作品が
ここ数年のアニメ映画の中では最も好きなのだが、
「ベルヴィル・ランデブー」は、そんな私の2004年度公開のアニメ映画のNo.1作品になった。
洒落た音楽も素晴らしく、大人のデートコースに組み込んでも何の問題もない。
ビターチョコレートのような味わいを是非。
少しだけアルコールを入れてレイトショーで観ると効果倍増だ。
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▼映画「イリュージョニスト」魔法のタネは”思い遣る心”
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*こちらも紹介も2011 年4月26日の過去記事から再掲したものです。
シルヴァン・ショメ監督から7年振りに届けられたのが、
老奇術師と無垢な少女を描いた映画「イリュージョニスト」。
フランスの喜劇王ジャック・タチが愛する娘に遺した幻の脚本を、
タチの大ファンであるショメ監督が映画化したもの。
監督・脚本・キャラクターデザイン・音楽・編集の5役をショメが務めた
まさにショメからタチへのラブレターのような作品だ。
1950年代のパリ。
音楽やファッションがめまぐるしい進化を始める中で、
時代の変化に取り残されつつある老奇術師に居場所はない。
追われるように街を去り、海を越えてスコットランドまでやってきた男は、
山奥の寂れたホテルで家政婦として働く少女アリスと出会う。
かいがいしく世話を焼いてくれるアリスに、赤い靴をプレゼントする男。
男の奇術を本物の魔法と信じているアリスは、魔法で靴を出してくれたと大喜び。
街を出る男を追って、エジンバラまで着いてくる。
こうして、老奇術師と言葉の通じない少女との同居生活が始まった。
少女の夢を壊さないため、男は決して魔法の種明かしをしない。
かつてそれなりの名声を得ていたであろう男も
今ではすっかり客を呼べなくなり、仕事の質を落とさなくては食べていけないのだが、
さりとてショーウィンドウのマネキンは、奇術師としての彼のプライドが許せない。
夢よもう一度と追いかけることも、全てを諦めて降りることも出来ずに、
ゆっくりと時代から取り残されていく男に、アリスは屈託なく「次の魔法」を要求する。
オスカー・ワイルド作の童話「幸福な王子」のように、
身を削りながら少女に幸せという魔法をかけ続ける男。
やがて、少女はひとりの青年と出会い、恋に落ちる。
野に放たれた相棒(ウザギ)と、部屋に残された手紙に綴られた文面からは
最後まで魔法使いであり続けようとした男の思い遣りが溢れていた。
その一途な想いが新しい恋への架け橋となったとすれば、
男は間違いなく、本物の魔法使いだったのだと思う。
言葉の通じない少女と老奇術師という設定上、「ベルヴィル・ランデブー」と同様に
作中ほとんど台詞が存在せず、二人のかけあいはほぼ全編がパントマイムで進んでいく。
「ベルヴィル」からさらに進化したアニメーションは、ワンカットも見逃せない
名シーンの洪水で、どこで一時停止してもそのまま絵画になりそうな美しさ。
そこに心良く染み入る音楽が重なれば、台詞など必要はない。
むしろ、私には僅かな台詞が邪魔にすら思えた。
「ベルヴィル・ランデブー」ほどのインパクトもスピード感もないが
人生のホロ苦さを描いた人情劇としては一級品。
お婆ちゃんの冒険活劇といったような内容っぽく、大変興味をそそられました。
個人的にラピュタのような冒険活劇物は大好きなもので・・・。
ジャズ調の音楽も映像に合っていて良さそうでした。
ハウルと連続で見ると、老人力爆発という感じになりそうです。
ところで、カートゥーンと台詞がほとんどないというキーワードで、ふとロードランナー(ゲームではなくワーナーのアニメのやつです)を思い出しました。あれって今見ても結構楽しかったりしますね。
以上、紹介記事のあらすじのところで、三輪車でツール・ド・フランスへ出場するのかと思った黒子改め黒衣でした。
悟空の大冒険で無茶やってたのは
なんとなく覚えてるんですが
しかし、この手の映画は田舎ではなかなか
やってくれないんですよね
レンタルに並ぶの待ってます
MIND GAME面白かったんですか
吉本のヤツですよね
あれ、レンタルでみつけて帰って見たら・・・
宣伝用のDVDでズッコケました。
間違えてばかりでスミマセン
けっしてネタで間違えてるんじゃないんですが・・
この映画もおもしろそうですね。
お、お名前が変わられたか。
「ラピュタ」と聞いてなるほどと思った。
これは、毒気のある、おばあちゃんが主役の
フランス版「ラピュタ」かも知れない。
あらすじに関しては、少しだけ修正してみたので
確認して欲しい。指摘感謝。
>豆しば殿
表情というか、キャラの動かし方というか、
とにかく初期の手塚作品(しかもマンガの方)を思わせるのだ。
DVD化されたらぜひご覧頂きたい。
>海苔殿
おお、なかなか知名度が高くない映画なのだが
ようやく知っている方が現れたか。
限定版が高過ぎて手が出ないのが残念無念。
見てみたいと思います。
宣伝のDVD見たとき、クレヨンしんちゃんの天才アニメーターが監督なんて紹介されてたんで興味はありました。
小森のおばちゃまに合掌
淀長さんといい私の好きな評論家がいなくなるのは寂しいですね。
おばちゃまはもう引退されて10年も経っていたのだな。
今回ニュースになるまで気づかなかった。
愛らしい&とてもエロいおばちゃんであった。
合掌。
とても興味が沸いたので、本日新宿にて鑑賞してきました。
とにかくサイコーでした。(大人になって見れてよかった~)
「ベルヴィル」ほどの表現力で忍殿に伝えられないのが残念ですが、このような形で上質の映画と出会えたこと、とても感謝しています。本当にありがとう。
おお、私としてもこういう書き込みはとても嬉しい。
やっていて良かった。
場末のBLOGの情報を信用していただき、こちらこそ感謝。
サウンドトラックCDがメーカー品切れで手配中の私だ。
CCCDだったので、輸入CDにしましたが。
明日には「スウィング」する予定!