日本サッカー協会は、9月20日14:00に10月6日の国際親善試合、カナダ戦のなでしこジャパン代表メンバーを発表した。なでしこジャパンにとってFIFA女子W杯2019フランス大会後初の試合。
カナダ戦招集メンバーを見ればJFAがW杯2019をどう総括したかが分かる。もう一つの注目はカナダ戦の「結果次第で東京五輪路線の変更」があるかもしれない点。
それではカナダ戦展望や試合結果をお伝えします。
これまでの対戦成績
- 過去2年ではカナダ1勝
- 過去10年ではカナダの3勝1分3敗
全くの五分である。高倉監督のもとでは1戦1敗(2018年3月のアルガルベカップ0-2負)。その時のカナダの先発メンバー9名は今回も召集されている。日本は7名。
カナダ戦結果次第で東京五輪路線変更があり得る?
東京五輪に向けては継続路線を選択している。即ち、惨敗した2019W杯からチーム編成方針なども含めて大きく変わらない。ただ、仮にFIFAワールドランキング7位のカナダ戦において
- ホームゲームで負けとなれば東京五輪でのメダル獲得は無理。メダル獲得を本気で目指すならメンバー再考など必然
- 本来ならホームゲームなので勝利が当然だが、引き分け以上なら今回の招集メンバー主体で東京五輪に臨むだろう
路線変更の期限は遅くても12月。従って、この試合は東京五輪に向けた継続路線が問われる非常に大事な一戦となる。
カナダの2019年度成績
- ( )内の数字は相手チームのシュート数
- 強豪国(FIFA女子ワールドランクトップ10)は太字
- W杯成績は緑で表示
攻撃力不足が一目瞭然
S:シュート
対戦国 | 月日 | スコア | S | 枠内 S |
スイス | 1.17 | 0-0△ | ||
ノルウェー | 1.21 | 1-0〇 | ||
アイスランド | 2.27 | 0-0△ | ||
スコットランド | 3.1 | 1-0〇 | ||
スウェーデン | 3.6 | 0-0 PK勝 | 9(6) | 3(1) |
イングランド | 4.5 | 1-0〇 | 13(8) | 5(2) |
ナイジェリア | 4.8 | 2-1〇 | 11(5) | 5(2) |
メキシコ | 5.19 | 3-0〇 | 20(2) | 6(1) |
スペイン | 5.25 | 0-0△ | 5(3) | 2(0) |
カメルーン | 6.10 | 1-0〇 | 10(4) | 4(1) |
ニュージーランド | 6.15 | 2-0〇 | 17(2) | 6(0) |
オランダ | 6.20 | 1-2● | 8(8) | 2(3) |
スウェーデン | 6.24 | 0-1● | 7(8) | 2(2) |
なでしこジャパン2019年度成績
スコットランド戦、PA内でハンドを取られなかったのがラッキー。W杯では辛うじてラウンド16進出が実態。
対戦国 | 月日 | スコア | S | 枠内S |
アメリカ | 2.27 | 2-2△ | 5(13) | 2(6) |
ブラジル | 3.2 | 3-1〇 | 11(22) | 6(6) |
イングランド | 3.5 | 0-3● | 12(10) | 4(4) |
フランス | 4.4 | 1-3● | 6(24) | 4(7) |
ドイツ | 4.9 | 2-2△ | 7(22) | 4(9) |
スペイン | 6.2 | 1-1△ | 3(4) | 1(2) |
アルゼンチン | 6.10 | 0-0△ | 8(3) | 3(1) |
スコットランド | 6.14 | 2-1〇 | 14(10) | 6(4) |
イングランド | 6.19 | 0-2● | 15(10) | 5(6) |
オランダ | 6.25 | 1-2● | 11(5) | 4(5) |
カナダ戦招集メンバー
負傷離脱と追加招集 (9月20日)
平尾知佳→武仲麗依(INAC神戸)
鮫島 彩→栗島朱里(浦和レッズ)
GK3名
- 山下杏也加、平尾知佳、池田咲紀子
DF9名
- 鮫島 彩、熊谷紗希、三宅 史織、清水梨紗、南 萌華、
- 宮川麻都、土光真代、高橋はな、清家貴子(追加招集)
MF7名
- 中島依美、長谷川 唯、三浦成美、籾木結花、杉田妃和、
- 松原有沙、宮澤ひなた
FW6名
- 岩渕真奈、田中美南、菅澤優衣香、小林里歌子、
- 遠藤 純、宝田沙織
チームプロフィール
2019W杯における年齢・経験値
- 強豪国(Top10)の中で平均年齢が最も低かったのが日本、次がカナダ
- 両チームともラウンド16で敗退
- オランダとドイツを除いて平均年齢26歳以下のチームのベスト8なし
- カナダのW杯・五輪出場経験者は14名。ただ、半数以上は前回カナダ大会に初招集の若い世代。代表試合経験は少なかった
今回召集されたメンバーの年齢・経験値
なでしこジャパン
- 年齢:23.3
- W杯プレー経験者:15名
- ベテラン(30歳以上):1名
- 代表試合:19.4試合
カナダ
- 年齢:24.4
- W杯プレー経験者:14名
- ベテラン(30歳以上):5名
- 代表試合:27.3試合
最年長はお馴染みのシンクレア―で36歳、最年少は今回召集3回目のJade Rose(代表試合出場なし)16歳。20歳以下7名。
カナダ戦試合展望
カナダはなでしこジャパンの攻撃をかわしてカウンター狙い
強豪国との対戦データに限定して言えば、
- カナダは攻撃力不足
- 日本はよく攻撃はするが得点に結びつかない(決定力不足)
- カナダの守備は比較的しっかりしている
- 日本は前半失点すると勝てない
なでしこジャパンは前半守備に重点を置いて臨めばいいと言ってきたが、おそらく前半から積極的な攻撃を仕掛けるだろう。一方、カナダはしっかりと守りながら少ないチャンスを活かすゲームプランだろう。
1点を争う攻防
1点を争う展開が予想される。問題はなでしこジャパンの課題の一つである前半の失点。これをいかに防ぐが、一つの見どころ。要注意はシンクレア―(36歳)で今シーズンもNWSL(*)で得点ランキング3位。これまで代表試合83試合で54得点は驚嘆としか言いようがない。
経験値の高いベテラン選手なら危機察知能力が高いので前半の失点を防ぐ確率は高くなるが、ベテランは少ない。ボランチとDFの連携が重要となる。
(*)NWSLはアメリカ女子サッカープロリーグで世界各国の代表クラスの選手が70名以上プレーしている世界最高峰のリーグ。因みに、かの有名なUSA代表で点取り屋アレックス・モーガンでさえ得点ランキングでTop10に名を連ねたのは2017年だけ(5位)。そんなリーグで3年目の今シーズン永里優季は現時点でアシストランキング1位、得点ランキング8位。
前半を0点で抑えることが勝利への道
攻撃力の乏しいカナダだから前半0点に抑えれば後半に怒涛の攻撃を展開し得点するだろう。しかし、前半失点するとW杯やそれまでの国際試合で繰り返してきたように後半の攻撃が空回り(決定力不足)し勝利は遠のく。
試合結果評価ポイント
国際親善試合のためカナダ代表がどれだけ真剣に戦うかは疑問。カナダ代表メンバーの殆どはシーズン中なのでケガを恐れて全力プレーは避ける。しかもアウェーの試合。
アウェーの戦いの難しさが分かる例として、男子日本代表の9月6日パラグアイ代表戦と10日のミャンマー代表戦(いずれも2-0日本勝利)を比較しよう。
コロンビア代表は移動の疲れなどで惨憺たるコンディションの中、世界ランキングがほぼ同じ日本でのアウェー戦に惨敗。日本代表はスコールなど悪コンディッションの中超格下のミャンマー相手のアウェー戦に辛うじて勝利。
スポンサーのために日本で開催する国際親善試合は強化試合という視点からは何の価値もない。なでしこジャパンがカナダに勝利しても不思議ではないし「世界ランキング7位に勝利」と手放しで喜ぶようなことではないが、2-0で勝利すれば一定の評価が得られるだろう。
カナダ戦試合結果
- なでしこジャパン 4-0 カナダ
- 得点者:岩渕、籾木、長谷川、小林
フォーメーション
- なでしこジャパン 4-4-2
- カナダ
先発メンバー
- 基本的にはケガの鮫島選手に代わり宮川選手が起用されただけで2019W杯メンバーのスタメンと変わらない。W杯でのメンバー選考や起用法の反省や課題は無いと認識。
- GK 山下杏也加
- DF 清水梨紗、熊谷紗希、南 萌華、宮川麻都、
- 中盤の底 杉田妃和、三浦成美
- 2列目 長谷川唯、中島依美
- トップ 岩渕真奈、菅澤優衣香
試合経過
前半:開始からカナダの動きが重い。マークは甘くチェックもない。そんな中、6分に中島からのグラウンダーのクロスを岩渕がゴール。押し気味で進めたなでしこジャパンに対し、20分過ぎからカナダが少しギアアップ。30過ぎからはカナダのペース。カナダに2度チャンスがあったがシュートできずそのまま終了。
後半:カナダは攻撃に転じて得点を狙おうとするが、前半体力を使い果たしたのか気持ちとは裏腹に体が重くパスは繋がらず決定的チャンスが作れない。一方、なでしこジャパンは持ち前の体力と連係プレーを活かし思う通りの攻撃を展開。なでしこのスピードにつていけないカナダに対して、後半20分、籾木2点目、27分、長谷川3点目、ロスタイムで途中入って小林が4点目。終わってみれば決定力を忘れさせるほどの4-0の大勝利で期待以上の結果を出した。
スタッツ
- シュート本数 なでしこジャパン 21本 - 7本 カナダ
- 枠内シュート本数 なでしこジャパン 9本 - 2本 カナダ
寸評
この試合を見て5分も経過しないうちに昨年11月のノルウェー代表戦を思い出した。あの時のノルウェーは今日のカナダ以上に動きが悪かった。一方、なでしこジャパンは縦横無尽に躍動し4-1で勝利。ノルウェーって大したチームでないと感じた。ところがそのノルウェーは2019年W杯でベスト8。
それはさておき、なでしこジャパンが4-0で勝利した点はかなりの評価に値する。なでしこジャパンにとって大きな自信を得たことだろうが、過信につながらないことを願う。
これで高倉体制は継続となり今日のメンバーから東京五輪代表メンバーが選出されることはほぼ間違いないだろう。
国際親善試合 試合日程・会場・テレビ放映
- 開催日時:10月6日(日) 14:30キックオフ
- 会場:静岡/IAIスタジアム日本平
- テレビ放送:TBS系列で全国生中継
まとめ
JFAの2019W杯総括は予想通りであった。
- W杯で負けたのは選手のケガと運の悪さ
- W杯を経験させたので更なる若手の成長が期待できる
- 東京五輪に向けて路線変更の必要はない
従って、今回の招集メンバーはほとんど2019年W杯のメンバー。 東京五輪メダル獲得に必要と考えて召集を期待したベテラン・中堅メンバーは全て外れた。外れたのメンバーは下記の通り。
- 山根恵里奈、有吉佐織、永里優季、川村優理、猶本 光、田中陽子
今回の招集メンバーで強豪カナダ(FIFAワールドランキング7位)とどのような試合運びをするのか、大きな見どころだ。攻撃力のないカナダに大敗するようなことはないが、負けならメンバー再考もあり得る。逆に、引き分け以上なら東京五輪招集メンバーはほぼ決まったようなもの。
いずれにせよ、東京五輪でのメダル獲得は2019年W杯で優勝するくらい難しいこと。なでしこジャパンはメダル獲得への執念と気迫を示して欲しい。
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