27日投開票の衆院選の結果を見ないと、マーケットの方向性が見えてこないという声が広がっている。そこで、衆院選の結果を4つのパターンに分けて28日の東京市場の動向を予想してみた。国内メディアの情勢分析報道は日に日に自民党、公明党の与党にとって厳しくなっているが、市場は次第に与党苦戦を織り込み始めているとも言える。もし、事前の予想とは異なって自民党、公明党が検討した場合は、日経平均株価の急騰という展開もありえる。
以下に4つのパターンを想定して、株価とドル/円の動きを予想してみた。
<自民200議席未満も、与党過半数微妙と毎日報道>
24日付毎日新聞朝刊は、衆院選の終盤情勢を分析した記事を掲載した。自民党と公明党は序盤の情勢から失速し、自民党は200議席を下回る可能性があると予想。自民党、公明党の過半数維持は微妙という認識を示した。
推定当選者数は、自民党が171-225議席、立憲民主党が126-177議席、日本維新の会が29-40議席、公明党が23-29議席、日本共産党が7-9議席、国民民主党が23-29議席、れいわ新選組が6-7議席などとなっている。
ここで注目すべきは、自民党の下限議席が171議席となっていて、立民の上限議席の177議席を下回っていることだ。可能性は低いものの、立民が第1党になる可能性を示している。
<自民200議席未満なら、日経平均は1000円超の下落>
筆者は他社の情勢分析も参考に4つのパターンに分けて、衆院選の結果と市場動向の関連性について予想してみた。
パターンAは、自民党が公示前の247議席(非公認を除く)から200議席まで減少し、公明党も32議席から25議席に後退し、与党で225議席と過半数の233議席を割り込んだ場合だ。
このケースでは、非公認の候補者が当選した場合に追加公認することが予想され、その他の保守系無所属の当選者を自民党に加える動きもありそうだ。その結果、233議席に接近もしくは上回ることも予想されるが、28日朝の段階では、自公の過半数割れという見出しが躍っているだろう。
日経平均株価は前週末比で1000円を超す下落となりそうだが、この結果は事前にマーケットに織り込まれていた部分がかなりあり、1000円前後の下げた水準で買い戻しが入り、その後は売り買いが交錯すると予想する。ドル/円はドル高・円安方向に動くものの、155円手前では円買いも出ていったんはこう着するのではないか。
<新連立へ合意難航なら、株価は一段安>
その際に注目されるのは、新たな連立相手が決まり、その政策合意に何が入るかだ。今のところ、特別国会の召集日は11月7日が有力視されているが、新たな連立対象になった政党との話し合いが難航し、特別国会の召集がどんどんと先送りされた場合は、政局の不透明感を反映していったん下げ止まった日経平均株価が再度、下げ圧力に直面することも予想される。
また、その後に想定されている総合経済対策のとりまとめと2024年度補正予算案の編成作業が大幅に遅延することになれば、一段と不透明感が増して日経平均株価の売り材料として意識され、円売りも再開するだろう。
このケースでは、衆院での新たな多数派の形成が短時間でできるのか、それともかつてのイタリアを彷彿とさせるような時間をかけた調整になるのかどうかが大きなポイントになると指摘したい。
<自民180議席・石破首相退陣表明のケース、日経平均は2000円超す下落か>
パターンBは、自民党の獲得議席が180議席前後まで大幅に減少し、27日夜の段階で石破茂首相が敗北宣言ともに首相辞任を表明し、後任の自民党総裁と首相選びが焦点になるケースだ。マーケットの衝撃は大きく、28日の日経平均株価は2000円を超える下落となっても下げ止まらず、下値が見えない展開になりそうだ。
ドル/円は、日本の政治情勢が混とんとしたことによる日本売りが意識され、155円を短期間に突破する可能性がある。
<次期総裁・首相選びや連立政権合意が難航なら、年初来安値も視野>
石破氏が辞任を表明しても、その後の経済対策や補正予算編成、年末の2025年度予算案編成と重要な案件が控えているため、自民党総裁選は党員投票を省略して両院議員総会で新総裁を選出することになる可能性が高まると筆者は予想する。
その場合、自公での過半数割れの規模が大きいため、どの政党と連立協議に入るのか、3党連立か4党連立かなどで与党内の意見が割れ、かつてない政局の混乱が生じる展開も想定でき、日経平均株価は8月5日に記録した3万1458円42銭の年初来安値を意識することもあるだろう。
<自公過半数、株価は1000円超の上昇>
パターンCは、自民党単独で過半数は維持できないが、225議席程度を獲得して自公で233議席を上回る議席を確保するパターン。
事前に自民党200議席というイメージがマーケットに浸透していたため、日経平均株価は前週末比500円を超す上昇になると予想する。前週末NY市場で米株が上昇しているようであれば、1000円を超す上げを記録する可能性もあるだろう。
ドル/円は円が買い戻され、150円近辺までドル安・円高が進むということも十分にあるとみている。多くの市場関係者にとっては、このケースが最も居心地のよい値動きになるとみられるが、直近の情勢報道を見ている参加者にとっては、それほど大きな可能性にはならないとの受け止めが多いかもしれない。
<低投票率、与党に有利の声>
ただ、今回の衆院選では期日前投票の出足が鈍く20日までのデータでは、前回比17.56%減の467万人にとどまっている。また、27日の天気も西日本を中心に雨模様の予報が多いため、投票率の低下が懸念されている。
衆院選の投票率は2009年の民主党大勝時に69.28%に上昇したものの、その後の4回は50%台で推移。前回は55.93%だった。選挙分析の専門家は、55%を下回って50%に接近するようなら組織政党の公明党に有利に働き、自公合算の議席数が底上げされる可能性が相応にあると予想しているようだ。
したがって50%前半からさらに低い投票率なら、このパターンCの可能性が高まると筆者はみている。
<自民が単独過半数、日経平均は4万円回復へ>
自民党が単独で過半数の233議席を上回り、自公合わせて261議席の絶対安定多数を獲得した場合をパターンDとすると、マーケットの想定を大幅に超えた与党の勝利となるため、日経平均株価は一気に4万円の大台を回復し、ドル/円は140円台後半まで円高が進むと予想する。
今のところ、実現可能性は低いように見えるが、与党過半数割れの事前報道で中間層が危機感を持ち、与党の獲得議席が持ち直すということも可能性としてはゼロではないだろう。
ただ、このケースでは日銀の利上げの可能性が高まるとマーケットが時間差で判断し、どこかの段階で日経平均株価の上値を抑えることになると筆者は予想する。
<注目される27日午後8時の獲得予想議席の報道>
このように今回の衆院選は、結果の振れが大きくなるとみられ、マーケットの反応も「天と地」ほどの開きが出てくることになる。
27日午後8時にテレビ各社が報道する出口調査に基づいた獲得議席予想が、過去数回の衆院選と比べて格段に注目されることになるだろう。