一歩先の経済展望

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東証社員インサイダー容疑、海外勢の日本株売りに 円安連動の裏に衆院選情勢

2024-10-23 14:37:51 | 経済

 東京証券取引所の男性社員が企業の未公開情報を親族に漏らし、インサイダー取引関与の容疑で証券取引等監視委員会が強制調査していたとのニュースが、東京メトロの新規上場(IPO)でお祭りムードを盛り上げようとしていた東京株式市場に冷水を浴びせた格好だ。企業に適正なガバナンスを求める立場の東証から社員の不祥事が発覚したことで、東京市場や日本全体に対する海外勢の厳しい目が日本株や円の売り材料として意識されそうだ。

 加えて衆院選での与党苦戦の情報が東京市場の不透明感を一段と高めており、日本株と円にとっては一段の下落を招くのかどうかの大きな分岐点をいきなり迎えることになった。

 

 <東証社員、TOB情報を親族に漏らした疑い>

 国内メディアの情報を総合すると、東証の男性社員は株式公開買い付け(TOB)などの情報を職務上の行為で知り、公表前に親族に伝達し、その親族が複数回にわたって不正な株取引を行い、少なくとも数十万円の利益を上げていた疑いが浮上している。

 監視委は今年9月、男性社員自宅などへの強制調査を実施し、東京地検特捜部への告発も視野に入れて調査を進めているという。

 東証などを運営する日本取引所グループは23日に「引き続き、調査に全面的に協力していく。上場会社をはじめ、関係者の皆さまに多大なご迷惑とご心配をおかけし深くおわびする」とのコメントを公表した。

 東証は国内最大の証券取引所であり、上場企業の審査や重要情報の「適時開示」の確認など市場運営の公平性や透明性に目を光らせる機能を担っており、その社員が自ら違法行為を行った疑いで強制調査を受けたことは、内外の市場関係者から「日本の市場は本当に公正なのか」という強い疑惑を生み出した。

 

 <インサイダー容疑、海外勢が敏感に反応>

 複数の市場関係者によると、23日午後になって日経平均株価の下げ幅が大きくなったのは、欧州勢などの一部海外勢がこのインサイダー取引容疑の件を材料にまとまった売り注文を出したことがきっかけとなったという。

 結局、日経平均株価は3日続落となり、前日比307円10銭(0.80%)安の3万8104円86銭で取引を終えた。

 この日、東証プライム市場に新規上場した東京メトロの同市場における売買代金ランキングが首位となり、既存の上場銘柄に換金売りが出た、との見方もあったが、株価の下落幅が大きくなったのは午後の取引であり、海外勢の売り注文に押された可能性が高いと筆者は考える。

 

 <円売りにも連動、日本売りの色彩も>

 また、ドル/円が7月31日以来、約3カ月ぶりに152円台までドル高・円安が進み、日経平均株価は自動車などの輸出関連株の買い戻しでこの日の安値から切り返したものの、この円安にも海外勢が絡み「日本売り」の色彩が濃かったという指摘も市場関係者の一部から出ている。

 日本株売りと円売りの背景には、日本を取り巻く不透明感を嫌気した海外勢の行動があるとみられている。1つ目は、冒頭で言及しした東証社員のインサイダー容疑に関する監視委の調査というニュースだ。日本企業のガバナンスは近年、東証を傘下に持つ日本取引所グループの強い指導力によって着々と強化されてきた、との受け止め方が海外勢に広がっていた。

 

 <石破首相、再発防止へ強いメッセージ必要>

 ところが、よりにもよってその取り締まる側の東証からインサイダー取引の疑惑が浮上して「途上国並みのダーティーさだ」という声が欧米勢から噴出しているという。

 これはかなり深刻だ。一片のおわびのコメントで内外市場関係者の疑惑を払拭することはできない。もし、余罪が次々と浮上するようなら、東京市場だけでなく、日本の市場機能全体に深刻な疑惑を生じさせかねない重大問題が秘めらている。

 衆院選の最中で、石破茂首相には十分な報告が上がっていないかもしれないが、石破首相が早い段階で何らかのコメントを出し、再発防止に全力を尽くす姿勢を早急に示すことが必要だ。

 

 <加わる衆院選での与党過半数割れの懸念、強まる不透明感>

 23日に進行した円安には、複数の要因が絡み合っていると思われるが、東証社員のインサイダー取引容疑に絡む日経平均株価の下落という現象を見て、円売りを仕掛けた海外勢もいたようだ。そこには、もやもやとした「円売り」のムードが潜んでいるように筆者には映る。

 さらに2009年の衆院選以来となる与党の過半数割れの可能性を指摘する報道が多くなるにつれ、自民、公明両党による政権運営の前途に大きな暗雲が垂れ込め、不透明感が強まっていることも円売りを促したようだ。ドル/円は151円後半にあった200日移動平均線を突破すると152円台まで駆け上がった。

 22日の当欄で指摘したように、米国をめぐる経済・政治情勢は米長期金利上昇ードル高を促す材料が多くなっており、そこに日本国内の不透明要因が加わると、ドル高・円安を加速させるエネルギーを充満させることになる。

 27日の衆院選投開票日を前に、東京市場には怪しげな「日本売り」の影が大きくなっている。

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