アナグラム
~舌切り雀
退屈凌ぎ 靴下の意義
(たいくつしのぎ くつしたのいぎ)
舌切り雀 擦り傷した目
(したきりすずめ すりきずしため)
手薬煉 すぐ寝て
(てぐすね すぐねて)
サドンデス 三度です
(さどんです さんどです)
(終)
アナグラム
~舌切り雀
退屈凌ぎ 靴下の意義
(たいくつしのぎ くつしたのいぎ)
舌切り雀 擦り傷した目
(したきりすずめ すりきずしため)
手薬煉 すぐ寝て
(てぐすね すぐねて)
サドンデス 三度です
(さどんです さんどです)
(終)
腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
23 蝶番
あの光の筋は何を意味するのか。
壁のあの線。扉の縁か。
すると、あれは扉か。
あの筋の近くの丸いような物は取っ手か。取っ手のようなあれは、取っ手か。
あれが取っ手なら、あそこは出入り口で、あれは扉か。
あの重たげな扉のような長方形の辺の内側に取っ手のような物があって、その下に鍵穴があれば、その上にあるのは取っ手で、そして、鈍い色合いの取っ手があるのなら、あれは分厚い扉だろう。
鍵穴があれば、向こう側が覗ける。ただし、向こう側に鍵穴隠しがあれば無理だ。
鍵穴のような所から斜めに光が射しているのなら、鍵穴かもしれない。そして、その光が暗くなったり明るくなったりすれば、向こう側に誰かがいることになる。誰か?
光の変化は夏の雲によるもので、向こう側には誰もいないのかもしれない。秋の風に吹かれた広葉樹の木の葉が揺れるせいかもしれない。冬が来れば、この時空は閉鎖される、春まで。
小癪な木め。風よ、吹くな。
風はこちらでも吹いている。息のようだ。
鍵穴のような何かが鍵穴なら、向こう側からこちらが覗けるはずだ。誰が覗くのだろう。何が覗くのだろう。屈むのか。車椅子に座ったままか。小さい人なら、背伸びをする。
鍵穴を塞いでしまおう。穴ならば塞げる。風船ガムを噛もう。
風船ガムはしまってある。今では貴重品だ。
貴重品はすべて宝箱にしまってある、思い出の品々とともに。
黒ずんだ宝箱には鍵が掛かる。宝箱は本のような形をしていた。
鍵はどこにしまったか。夜明けに貰った鍵だ。
扉の鍵穴を塞いでも、向こう側からペンなどで突けば、塞いだ物は簡単に落とせる。風船ガム程度では。
あの扉のようなものが唯一の扉なら、掌に吸い付く取っ手のようなものの反対側に頑丈な蝶番があるはずだ。なければ扉ではない。蝶番のような物はあるか。あれば扉だ。
扉があちら側に開くのなら、蝶番はこちらから見えない。蝶番がこちらから見えれば、扉はこちら側に開く。耳障りな金属音を発してこちら側に開く。その前に古い箪笥を置くといい。箪笥がなければ、椅子でもいい。堅い木の椅子を斜めにし、その背を取っ手に掛ける。ちょっとやそっとでは開けられまい。どうだ?
開かない扉の鍵穴から向こう側を覗くと、異星人が箸で突く。
私の目はすでに失われた、右か左。
光が徐々に薄れる。
光の筋の、あの意味を知りたい、できるだけ早く。知っているはずの意味。思い出せない意味。思い出したくないとしても、思い出さねばならない、できるだけ早く。
急がねば。
私には時間がない。
(終)