腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
27 「そいつ」(2)
「そいつ」は開かれた。同時に閉じられた。箱の中には小さな生き物がいた。「箱の中には小さな生き物がいた」と本に記されていた。そんな本を小さな生き物が読んでいた。と、本に記されていた。小さな生き物は、開かれた箱の中で慌てふためき、隅にうずくまり、小さくなって本を貪るように読み始めた。と、本に記されていた。出られない。無理だ。とても無理。絶対に出られない。
やっぱり終れないね。
「そいつ」は街路樹の枝にうまく載った。
うますぎるけど、まあ、いいか。
バキューン!
ぱらぱらとあちこちの部屋で点灯。二階の窓が上がり、全裸の女が身を乗り出す。オッパイのサイズは……
そっちかよ。いいけど。
「どうした?」
男の声。
「あれ、何かしら」
「ああ。本だろう」
「本なんか、もう読み飽きたわ。箱じゃなくて?」
「箱なんか、邪魔になるだけだぜ」
「そうね」
「じゃ、続けよう」
「いやよ」
「どうして?」
「やり直し」
消灯。
悪くないけど。ううん。どうしよう。やり直し? どこから?
「そいつ」は、なぜか、地下に落ちている。地下道は迷路だ。所々、崩れている。迷路にはいろんな物が落ちている。役に立つ物もあれば、そうでない物もある。拾えば却って邪魔になる物もある。その「それ」に誰かが近づく。拾うか。拾わないか。拾うとしたら、何者か。勇者か。シャーマンか。歌手か。商人か。詩人か。異星人か。司書か。あなたか。
と、こんなんでよろしいかな?
(終)