萌芽落花ノート
25 血痕
「あたしってこんなおんなよお」
と叫びながら
おそそに毛のない娘が深刻な三輪車の舞う大通りを走り抜けた
たくし上げたスカートの下は完璧な無防備で
二筋の赤銅色の血糊がてらてらと鮮やかだ
人々は感嘆の声を逆流させて
何も見なかったように装いはしたが
夕雲がぐっと厚くのしかかり
土砂降りになりそうな静寂に救いを求めた
やがてざっとくれば
すべすべの太腿を連れて
あの子も結婚するという
(終)
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