ヒルネボウ

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萌芽落花ノート  24 怠惰な冬

2025-01-12 23:40:55 | 

   萌芽落花ノート

   24 怠惰な冬

冬は、僕のいる所からずっと遠くへ行ってしまった。

瞬間、僕を叱咤するのは冬のはずだった

ぬくぬく、おこたの中で、僕は嘘泣きをした。

テレビの音の籠った部屋で、ことこと、薬缶がストーブに口説かれて耳元に熱い息を吐きかける。喉のあたりは、ひりひり、焼けつくようで、水を一杯と思うけれど、胃袋はぱんぱんで、何も受け付けてくれない。いっそのこと、何もかも吐きだしてしまいたかったが、洗面所に立つには部屋がおとなし過ぎた。

窓を開けると、いい風。いい風以上には吹かないのだ。

多すぎるものを誰かに施したいと思ったが、これは誰かに恵まれたものだ。一人には多すぎても十人には少ない。

そんなこんなで、一番うまい手は、締め付ける丹前を脱ぎ捨てて、雪道へ逃げ出すことなのだ。

予定が決まった。

すると、ぼんやりしてきて、ぼんやりしていることだけは、はっきりしていて、冬が僕を引きずり出さないのなら、僕が自分を引きずり出そうと、思ったり考えたりするわけだが…… 

よいしょっ。

とか何とか、声にならない。

だったら、最初から眠ってしまえばよかったんだ。

そうそう。

お休み。

これでいい。

これでいい。

これが冬なのだ。

(終)

 


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