上が一週間前で、下がその一週間後。
順調に進んでいるかのように見える現場だが、まったく進んでない。
のみならず後戻りさえしている。
「どうしたの?」
週イチの全体工程会の席上、思わず私がそう問いかけたのも当然のことである。
「あと工程を見直して・・・」
「見直すたんびに日数が増えていって・・・」
という回答に、
「見直すのはええことやけど、そんなしょっちゅうしょっちゅう見直ししよったら身体がもたんぜ」
とかナントカ返しつつ、時間がないのでその場は終了。
あとでじっくりヒアリング、ならびにカウンセリングを行うことにした。
すると、なんのことはない。
一つのチェーン(作業のつながり)が完了して、次のチェーンにバトンをわたすときのタイムロスが全体工程に大きな影響を及ぼしているのである。
具体的にいうとそれは、コンクリートの養生。
品質管理の上で必要不可欠なものだから、タイムロス(=ムダな時間)という呼び方はふさわしくないかもしれないが、
その間、実質的な作業はしていないのだから、時間的な意味だけからいえばやはりロス。
その「養生」によるタイムロスが数カ所あり、それを工程に入れ忘れていたか、あるいは入れていたが日数が短かった。
そこを見直したがためにチェーンの総日数が増加した、とこういう理由である。
もともと「養生」というものは、その期間を経ずには次工程に移れないという意味で、「つながり」としてはクリティカルそのものである。
だが「養生」をクリティカルなタスクとしてしまうと、実行されないタスクがクリティカルチェーン(クリティカルなタスクのつながり)の総日数にカウントされてしまい、おかしなことになってしまうのである。
なぜそれがおかしいのか。
「養生」にかかる日数には安全余裕がないからである。
一つひとつのタスクから安全余裕(バッファ)を差し引いて、プロジェクトバッファとして工期の前にまとめて配置する。
そして、クリティカルなタスクが進んだか遅れたかではなく、プロジェクトバッファが増えたか減ったか、あるいはどういう増え方や減り方をしているのか、で工程を管理する。
これがCCPMの根幹中の根幹である。
このときプロジェクトバッファのサイズは、クリティカルチェーンの総日数に一律の割合を乗じて決められるが、
もともと安全余裕がないタスクをクリティカルチェーンに足し込んでしまうと、プロジェクトバッファのサイズがその分だけ(ムダに)大きくなってしまう。
ということはすなわち、それだけ余計に工期が必要になるということであり、
「契約工期という約束」を前提として組み立てられる工程にとっては、それだけ余分な日数が必要になるということである。
これが「おかしなこと」の理由である。
だから「養生」は、でき得る限りクリティカルなタスクとはしないと、こういうわけである。
ところが、どうやっても「養生」期間中に工事がストップしてしまわざるを得ないことがある。
今回の場合もそうである。
で、私がアドバイスをしたことは、
まず、「養生」のタスクに占めるバッファの割合を、算出されたプロジェクトバッファのサイズから差し引く。
クリティカルチェーンにおける「養生」の占める割合が多ければ多いほどこれは効く。
だがそれは、あくまで机上の計算。
もっともシンプルかつ効果的なのは「養生」の日数を短くすることである。
で、秘策を授けた。
じつのところをいうと、「秘策」、というほどの大げさなものでもないが、そこは企業秘密である。ここには書かないでおこう。
「なんや、さんざん理屈を並べておいて結論はそこかいな。そんなん誰でもわかるやろ」
とお思いのそこのアナタ。
たしかに、こんな回りくどいことを言わなくてもデキるアナタはわかるだろう。
だが現実は、皆が皆そうではないのである。
そして私と私の環境は、そういうなかで現有戦力の底上げを図り、チームワークでたたかっていかなければならない。
そんなとき、どうみても順調至極な今に惑わされず、3ヶ月先の明らかな危険信号を、誰でもがわかるように教えてくれるCCPMは威力抜群である。
発せられた信号への有効な解決策は、場合によっては誰でもかれでもが立てられるものではないかもしれない。
当然そこは技術力の優劣や経験の多少によって違ってくるだろう。
だが、「赤信号」と、どこが「赤信号」の原因なのかという共通の認識は持つことができるはずである。
で、我と我が身をふりかえり反省し、担当さんに「ゴメンね」と頭を下げる。
「見直すのはええことやけど、そんなしょっちゅうしょっちゅう見直ししよったら身体がもたんぜ」という言葉をである。
わかったことはすぐ修正、そして早め早めに対策を。
その対策が効果を産み出すかどうか、やってみなければわからない。
ダメなときは二の矢を放ち、それでもダメなら三の矢を放つ。
そうやって今日も、私と私の環境の、
CCPMな日々はつづいていくのである。
↑↑ (有)礒部組現場情報ブログ
発注者(行政)と受注者(企業)が
チームワークで住民のために工事を行う
(有)礒部組は三方良しの公共事業を実践中!