風蘭 (角川ソフィア文庫) | |
岡潔 | |
KADOKAWA/角川学芸出版 |
『春宵十話』に始まり、小林秀雄との対談『人間の建設』とつづき『春風夏雨』。怒涛の「岡潔」三連チャンが終わったあと、やはり『春宵十話』の印象が強烈だったからだろうか、著作を読み進めていくうちに、その感激がだんだんと薄まってきたのは否めず、ひとまずここらあたりで止めておこうかと思ったその気持ちを、「あともうひとつ」と考え直させたのは、『風蘭』の文庫版解説として内田樹さんが書いた文章を、Amazonの内容紹介で読んだからだ。
いわく、
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「しだいに心身にしみ込んでくる、そういう知見に満たされている」――内田樹氏
人を育てるのは大自然であり、その手助けをするのが人間である、だが何をすべきか、あまりにも知らなさすぎるのが現状である――六十年後の日本の行く末を憂い、警鐘を鳴らし続けた岡潔。今まさに彼が危惧していた通り、日本は厳しさのうちにある。少子化が進み、教育の形が刻々と変化する現代社会において、岡が示す教育のあるべき姿は多くの気づきをもたらすに違いない。たおやかな語りの中に慧眼が冴える。
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読まずばなるまい。
当然だ。思うところあり、あえて近ごろでは距離を置いているが、かつてはタツラーを広言していたわたしだもの。内田先生がそう言うのであれば、読まずにおけるわけがない。
ということで、
『風蘭』を読む。
「この小冊子は、わたしが講談社の藤井和子さんに話しましたのを、そのまま活字にしたものです。」
聞き書きである。
ひとことで言うと、とてもよい。
のっけからずっと、岡潔の「知見」と「慧眼」が読み手であるわたしの肺腑をつかんで離さない。
だがそれは、圧倒的に読み手に迫ってくるという類のものではない。
では、どういうものなのか。
もういちど内田先生にご登場願おう。
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岡潔の教育論は現代の教育行政官僚や教育学者がまず絶対に口にしないような人間的叡智に満たされている。私がこの解説で触れたのは、ほんのその一端に過ぎない。この本はときどき偶然開いた頁から読み返すような読み方が似つかわしいと思う。自分の心に残った言葉を手帖に書きとめたり、紙に書き写して机上に掲げたりして眺めているうちにしだいに心身にしみ込んでくる。そういう知見に満たされている。読者のみなさんにはぜひそういう読み方を試みて頂きたいと思う。
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よい書にめぐり合った。
長いつきあいになりそうだ。
まだ全部を読み終わってはいないのだけれど、そう確信している。
森田真生先生の日頃の話しぶりから、数学の送りモノとして捉える、
「もろはのつるぎ」(有田川町ウエブライブラリー)あり、
ご講評お願いいたします。
『呪いの時代』文庫解説 by 森田真生
https://honz.jp/articles/40631
の中にも岡潔が登場しています。