改めて真菌培養培地。
分離できた真菌は「糸状菌」であることは形態学的に分かっているのだけど、白癬菌かどうかまでは判別できなかった。但し、「1種類」というのがポイント。鉄爪に付着したサンプル と同時に採取しているから、もし、サンプリングに問題があれば、同じように訳分らない状態になるはずなんです。こういう訳分からん状態を「コンタミネーション」といって、試料採取の失敗と位置付ける。
爪水虫については、人間でも同定するのにサンプリングが極めて重要であるとされています。やっぱり足元って汚い箇所だから、上手くサンプリングしないとコンタミネーションが簡単に起きてしまって、なかなか疾患特定に至らないんです。感染性疾患や、真菌寄生性疾患の場合は、これはかなり重要です。
人の爪の場合のサンプリング法がこちら。
白癬菌は爪の末端から侵入し、奥に向かって増殖していきます。爪の伸びに伴って、場所が奥に奥にずれていくからサンプリングの場所もそこ。搔き取るので、検査される側はおっかないでしょうけども。で、こうした寄生の特徴から、爪先端あたりをいくら塗り薬で治療しても治らない、という結果になる。市販の水虫治療薬は、爪白癬症にはまず効きません。
でねえ、日本では「水虫」なんて軽んじた名前が付けられているから、病気として軽く見られる傾向のある真菌感染症ですけれども、世界的に見ると、極めて危険な疾患である。そういう疾患が蔓延していて、なのに誰もがテキトーに考えている日本人て呑気だなあと思います。大体「水虫」っていうのは大昔、江戸時代頃に、どんな病気も体に巣食うなにかの「虫」のせいだ、という考えに基づいて命名されたものでしてね。水虫だけ病名として残っているのは、はなはだ遺憾な話です。
昭和~平成の初め頃までは「水虫を治せたらノーベル賞」なんて言われてまして、従って、訳分らん民間療法が魍魎跋扈して、それが未だにYOUTUBEなんかに出てくるのも、遺憾の極み。ノーベル賞どころか、今現在、効果が高く安全性も高い抗真菌薬がどんどん開発されてて、きちんと皮膚科で治療すれば確実に「治る」疾患になっています。
今現在、水虫=白癬菌感染症の治療は飲み薬と塗り薬(市販のじゃありませんよ)が中心になっていますが、原則は飲み薬ということになります。塗り薬だけでは、白癬菌を完全に退治することは不可能なんですね。
病原体のサイズなんですが、真菌は非常に大きい。従って体細胞に対して「寄生」して増殖する。細菌やウイルスはめちゃ小さくて、体細胞に取り込まれて悪さをしたり、体細胞に直接アタックしてくるから「感染」となります。真菌症を「寄生性疾患」というのはそのためですが、ここら辺は感染になったり寄生になったり、混乱している所もあります。
とにかく、水虫は現在は「治る」病気だということです。
参考文献
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます