「キャッツ」「オペラ座の怪人」の作曲で知られるミュージカルの巨匠、アンドリュー・ロイド=ウェーバーは、イエス・キリストの生涯をミュージカルにした「ジーザス・クライスト・スーパースター」や、創世記のヨセフ物語をミュージカル化した「ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・ドリームコート」という、聖書を題材にしたミュージカルも生み出しています。
2020年3月27日、私は東京の日生劇場で上演されたアンドリュー・ロイド=ウェーバー脚本・作曲のミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」~汚れなき瞳~を観劇しました。
実は1996年に初演されたこのミュージカルを私は1999年にロンドンで観劇しましたが、この作品が日本で上演されることはないだろうと思っていました。
と言うのは、イエス・キリストや新約聖書の内容に親しみのない日本人が理解するのは難しいのではと思ったからです。
それから約20年以上経ってから、このミュージカルが日本人キャストで上演される、しかも主演は三浦春馬さんと知って驚きました
三浦春馬さんは2019年に「罪と罰」で主人公のラスコーリニコフという難役を見事に演じられた俳優さん。何の偶然なのか、彼はキリスト教に関係する物語の主演を二年続けて演じることになったわけです。
さて、日本語版「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」は2020年3月7日から3月29日まで東京の日生劇場で上演されることとなり、昨年12月に販売された前売り券は早々に売り切れてしまうほどの大人気。
しかし、新コロナウィルス感染拡大の情勢により、7日の初日は20日へと延期されたのでした。
さらに情勢は変わり、東京公演の千秋楽も2日間前倒しとなってしまった3月27日、奇しくも私はこの公演を観ることができたのです。
物語は自分の家の納屋に隠れていた男を、脱獄囚とは知らずにイエス・キリストのよみがえりと信じてしまう純粋な少女と近所の子供たちによって展開されます。
少女を演じる生田絵梨花さんが「イエス様、あなたは私のことを愛してくださっています。私もあなたのことを愛しています。」と言うセリフの純真さがストレートに心を打ちました。
「今まで誰も自分のために祈ってくれる人がいなかった」と傷ついた心情を歌に込めた三浦春馬さんが痛々しいほど素晴らしい演技でした。
演劇・ミュージカルのファンとしてこういう形でイエス・キリストが宣べ伝えられることがとても嬉しいです。
しかし、何よりもお客さんたちも演者やスタッフ、関係者さんたちもウィルスから守られますようにお祈りいたします。