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SiriusとAldebaranとPolaris

智恵子飛ぶよみ終えて

2015-03-28 11:03:54 | 日記

津村節子著:智恵子飛ぶをよみ終えて。

大げさなことではないが。


最終章:荒涼たる帰宅。

病魔に冒されて不帰の人となる。

満足できる画のひとつも描けなかったアトリエ。

無言の帰宅である。

 

光太郎は茣蓙に横たわる智恵子にそれでは背中が痛かろうと、

シーツを当てるが親戚の老女に叱責されシーツを外す。


 

病室にあるとき、

光太郎の顔を見ると微笑んで見せる。

しかし、それが意識の内にあるのか光太郎には判別できない。

 

このころから紙絵を始める。

光太郎にしか見せない。

ようやく、光太郎は智恵子の才に驚き、

心からその紙絵のすばらしさを讃える。

 


自分の才能を信じて、

世に受け入れられないむなしさ。

光太郎はちゑさんだけの世界だと褒めてくれる。

でも、あの才能豊かな光太郎の本心か?

と、思うとますます自分が惨めになる。

そんな想いを胸に日々悶々とする智恵子。

実家の父の死を追うように妹の相つぐ死。

そして、造り酒家長沼家の没落。


世俗に背を向け、それぞれの道を二人で歩むこと。

それが智恵子の願いだった。

東京には空がないと云い、

故郷の空が本当の空だと云って、

精神と肉体までも病んで永遠の眠りについた智恵子。

智恵子の言った本当の空からいまもこの世を視ているだろうか。