昔、砂漠の国に不思議なサーカスの一座がありました。
旅から旅へ、いろいろな国に参ります。
サーカスを率いる男は、うわさでは、2000年も生きているのだとか。
さて、このサーカスの一番の出し物は、
過去が見える水。
お客にひとつのカップを選ばせて、
その水を飲ますだけ。
ジャスミンの香りのする水を飲むと、
お客はすとんと夢の中。
目が覚めると、男がにやっと笑っている。
お客はたいてい青ざめて、
なぜ、知っている!と叫ぶとか。
「まだまだありますよ」
「全部、入っているのかい」
「入っていますよ」
「そのカップの水、入れ替えることはできるかね」
「できますよ」
「じゃ、やってくれ」
「いいですけど、だんなの未来が変わりますよ」
「もちろんだ。もっと素晴らしい未来になるように頼むよ」
「分かりました」
男は一番最後のカップを持ち上げると、
砂の上にカップの水をまいた。
それ以来、お客の姿を誰も見ていない。
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