タロット柊

考えること、感じることの記録

21日(木)カップの9「カップの意味」

2019-02-21 09:36:49 | タロット2019・2月

私はカップを買いに行く。

この男が売るカップを買うのは、もう何度目だろうか。

 

選択肢はいつでも九つ。

でも、買えるのはいつでも一つ。

迷う。どうしても迷う。

なぜなら、同じように見えて、今まで一度も同じカップはなかったからだ。

おまけに、男はカップを手に取ることを許さない。

だから、ここから、一つ一つをじっくり見て、

あれを、と指差すだけ。

 

今回選んだカップを渡される。

男は「まだまだですな」なんていう。

手に取ると、驚くほど軽い。

というより、重さがなかった。

まるで羽を1枚、持っているようだったが、

とてつもなく頑丈に思えた。

今までの、どのカップとも違った。

私は大変良いものを手に入れたと思って、うきうきと家に帰る。

 

さて次の日。

昨日、買ったはずのカップがない。

おかしい。

そんなわけはないと家じゅう探すが、どうにも見つからない。

本当に困った。

息苦しくなって、窓を開ける。

とたんに風が吹き、

どこかでぱたんと音がした。

 

今のは?

 

また風が吹く。

今度は転がる音がする。

 

まさか、と思い、音のする場所を手探る。

 

カップはあった。

けれども透明で、重さもなかった。

昨日、金色に輝いていたけれど、

あれは、男が見せた色だったんだ。

 

こんなカップは初めてだ。

私は途方にくれた。

あの男が売るカップは、必ず使わなければいけないのだ。

そうでなければ、10に進めない。

10に進めなければ、カップが私の世界から無くなってしまうのだ。

 

以前、一度だけ、手にしたカップがあまりに重く、

使うことができなかった。

10はやってこなかった。そして、私は笑い方を忘れてしまった。

長い時間をかけ、男を探し、ようやく私はカップの意味に気付いた。

 

カップには、それぞれ、ある出来事が入っているのだ。

あるカップで、私は憎しみを知った。

またあるカップで、愛おしさを知った。

つらさ、苦しさ、喜び、癒し、

たくさんの心を知るために、カップにはそれにふさわしい出来事が入っているのだ。

 

それにしても困った。

透明で重さのないカップを、どう使おう。

どうすれば、目に見えないものを見ることができるのだろうか。

どうすれば、手に触れないものを使うことができるのだろうか・・・

 

そうか。

それが、今度のカップの意味だったのか。

 

 

カップは、またどこかに行ってしまった。

手から離れた途端、

どこにあるのか、分からなくなってしまった。

 

 

目に見えないものを信じられる心、

手に触れられなくてもあると信じる心、

 

頭ではなく、本当にそのことが分かるまで、

きっとカップは見つからないのだろう。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿