大島の空の下で

伊豆大島在住の中年のおっさんのブログです.日々の出来事を綴っていきます.一部は mixiとマルチポスティングしています.

最近読んだ本

2008-07-28 23:11:58 | Weblog
大本営報道部 
平櫛 孝
光人社NF文庫 267ページ

著者の平櫛氏はWWⅡにおいて大本営報道部員だった方ですが最終的にはサイパン守備隊の師団参謀として敗戦を迎えています.サブタイトルには 「言論統制と戦意昂揚の実際」 とあるので,ナチの宣伝相であったヨゼフ・ゲッペルスの手法との対比でも出てくるかと期待しましたがさにあらず.
前半はもっぱら国内でなされた報道と現実とを対比しながら,いわゆる「大本営発表」がいかに虚構に満ちたものであったかをつまびらかにしています. もっとも,ご本人が報道部員であったためそれはそのまま自己批判に直結しています.海戦を主体に大規模な戦闘について書かれています.レイテ島の攻防などは、大岡昇平の「レイテ戦記」に比べればはるかにコンパクトな内容ですが,厖大な資料の集積である同書よりもむしろ戦闘の全体像は捕らえやすいと思いました.正直なところ「レイテ戦記」はワタシには活字を追うだけで精一杯だったのです.

後半は佐官クラスの軍人の目から見た陸海軍の救いがたい反目の実態や. 総理大臣といえども不可侵な統帥権に護られた両軍と政府との関係から生じる構造的な戦争指導無責任体制の解説などが綴られ,戦後世代には実感不可能な武人としての無念さが端々に読み取れます. 著者ご本人のスタンスはWWⅡ をするべきではなかった戦争と規定していますが,当時の現役将校として,戦術上の不備を残念がる気持ちが率直に語られています. そのあたりの感覚は光人社とゆう出版社ならではの内容です.

最終章の敗戦のくだりには映画「日本のいちばん長い日」で周知となったクーデター計画の詳細や調印文書に「降伏」と「降服」 のどちらを使用するか,その理由は…といった戦記物ファンもあまり接したことのない話があり,今回いちばんの収穫と感じた部分です.


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