都内で日中,予定外の時間が出来た時にはよく上野に行きます.
19歳で始めた都会暮らしが日暮里からスタートしたのでここは休日になるとしばしば訪れたなじみの場所なのです.まとまった時間があるときは鈴本演芸場で昼席を通しで観たり,西洋美術館や国立博物館をゆっくり回るのですが,先週上京した時は静けさが恋しかったので,取って置きの場所で時間を過すことにしました.
上野動物園の表門前を左に折れ右奥に五重塔,左にミニ遊園地を見ながら少し歩くと右手の古めかしい茶屋を曲がったところにひっそりと上野東照宮という異世界への入り口があります.ちょっとよそ見をしていると見落としてしまいそうな鳥居をくぐると正面に鄙びた,たたずまいの朱塗り銅葺の社殿が見えます.ところが近づくにつれ左右に大名たちの寄進した石灯篭が立ち並びここが普通の神社ではないことに気付きます.「東照宮」の名前が示すとおりここは日光とならぶ家康を祭神とする社なのです.よく見ると小さいながらも「鄙びた」どころではない贅を尽くした建物であることに気付きます.門には左甚五郎作の「昇り龍 降り龍」がかかります.落語好きの方ならご存知の「ねずみ」「三井の大黒」と同様生きた彫り物として不忍池の水を飲みに行った伝説を生んだ傑作です.
参拝料を支払い昇殿するときに社務所でくれるパンフレットによると1627年に藤堂高虎によって造営されたが,家光により現在の形にデラックス化されたとあります.そういえば日光も家光が大幅に手を入れて現在の威容を誇る社殿に改築されたはず.家光は,よっぽどお爺ちゃんが好きだったのでしょう.7間×3間の拝殿はカーペット敷でゆったりと座ることが出来ます.開け放った開口部から涼しい風が吹き渡り間接照明で照らされた家康の甲冑や真筆の書を眺めながら1時間ほど過しました.この間に訪れたのは白人のカップル一組のみ.カタコトで聞いたところアメリカからの観光客でした.社殿の屏外には参拝者の気配がするのだけれど,200円の参拝料が惜しいのか,入り口がわからないせいか昇殿する人は少ないようです.以前来たときも拝殿で他の参拝者に会うことはありませんでした.
ここで瞑想や見学をしている分には何時間いても問題ないのですが,当日はうっかりメールチェックをしているのを社務所の方に見つかり注意されてしまいました. 何はともあれ関係者にとっては神聖な場所です.それなりの気配りは必要ですね.
社殿附属の総漆塗りのきざはしや回廊は長年の風雨のために見る影なく禿げてしまっています.今秋から本格修理に入るそうですが10年から20年かかる予定とのこと.完了したときには往時の豪華さを取り戻した姿をぜひ見に行きたいと思います.健康に注意してそれまで生きなくては・・・
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